御幸 一也
**夫婦子ども(ゆめ♀4歳)
なんの予定もない休日。
一也は月に一度の休日出勤で夕方まで帰らないし、ゆめは栄純の家に遊びにいっちゃったし。
誰もいない静かな家は久しぶりだ。
掃除洗濯を終わらせ、溜まっていた録画した番組を2時間くらいみた。
昼食は自分の食べたいものを、食べたいタイミングで食べた。
自由というこんな状況に慣れていなくて、そわそわしてしまう。
やっぱり家族が一緒にいる方が楽しい。
とは思いつつもリラックスできているのは確かだ。
夜にはみんな帰ってきて、日常に戻るのだ。
それまで羽を伸ばすとしますか。
気付くと昼寝をしていて、起きたらゆめを迎えに行かなくてはいけない時間が近づいていた。
「やっば!」
出掛ける準備をしていたら、一也から電話。
「もしもし?どうしたの?」
「ゆめまだ沢村ん家いるの?」
「うん。今から迎えに行こうと思ってたとこ」
「俺仕事早く終わったから、ゆめ迎えに行ってそのまま帰るよ」
「あ、本当?じゃあ頼むね。栄純には連絡しとく!」
ほっと一息。
ゆめは一也に任せてあたしは夜ご飯の支度を始めた。
***
支度も終わりそろそろ帰ってくる時間なので鍵をあけて待つ。
ソファーに寝転がりケータイをみる。
考えてみれば一人の時間はあっという間だったな。
「ただいまーっ!」
ゆめの大きな声が聞こえ、玄関に向かう。
「おかえり〜」
玄関に立っていた一也とゆめは同じ顔でニヤニヤしてる。
え、なに?
「せーの、おめでとー!」
「おめでとう」
二人におめでとうと言われたが、何がおめでとうなのか見当が付かない。
今日は誰の誕生日でもないし、結婚記念日でもない。
何の日だっけ?
まったくわからない。
「ねぇパパ!ママ固まっちゃったよ?」
「今日が何の日か覚えてない顔してるな」
「…ごめん、えーっと、何の日だっけ?」
「俺らが付き合った日忘れちゃったの?ちなみに今日で10年」
「付き合った日!うわぁ、めっちゃ忘れてた…。10年かぁ…」
付き合ってた頃は毎年お祝いして、一也が忘れてることの方が多かったのに、なんで忘れてたんだろう。
それだけ毎日バタバタしているということだろうか。
「もーママ忘れちゃダメじゃん!はい!これゆめとパパが選んだんだよっ」
ゆめに差し出されたものは小さなブーケ。
あたしの好きな花。
「それと、なまえが好きなケーキ」
「一也…ゆめ…、ありがとう!」
夕食もっと豪華にすれば良かった…なんて後悔をしつつ二人が中に入ってくる。
「なまえ」
ぐっと腕を引かれ、一也に後ろから抱きしめられる。
「ちょっと!恥ずかしい!離して」
「駄目。離さない」
「ゆめが見てるでしょ」
「うん」
「もー!一也!」
「なまえ、愛してるよ」
「…」
「いつもありがとう」
「あー!パパまたママ泣かしたー!」
「ゆめもおいで」
「ぎゅー!」
こんなに幸せでいいのだろうか。
やっぱり家族っていいな。
このぬくもりは何があっても手放したくない。
END
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