ヘムンレックツォレルェッチ



ヘムンレックツォレルェッチはミルク瓶を抱えて走っていった。
赤い帽子が風になびく。
隣の家のロンロックナハトジークが、子犬を抱いて玄関へ出てきた。
「ヘムンレックツォレルェッチ! ちょうど良かった、そのミルクを私に少し分けてくれない?」
「ロンロックナハトジーク! もちろん、良いよ」


ヘムンレックツォレルェッチはミルク瓶を抱えて走っていった。
緑の服がはたはた膨らむ。
角のお家のグーテンハックザルツが、寝癖を直しながら歩いていた。
「ヘムンレックツォレルェッチ! 良い所へ来た、そのミルクをおれに少し分けてくれよ」
「グーテンハックザルツさん! もちろん、良いよ」


ヘムンレックツォレルェッチはミルク瓶を抱えて走っていった。
黄色い靴がパタパタ鳴る。
三丁目のザッハリーベナルンシュタインが、高らかに歌いながら街角に立っていた。
「ヘムンレックツォレルェッチ! 私のためにミルクを少し置いていってもらえない?」
「ザッハリーベナルンシュタイン! もちろん、良いよ」


ヘムンレックツォレルェッチはミルク瓶を抱えて走っていった。
しましまの靴下は半分ずり落ち、やっとのことで小さな子どもは外れの家まで辿り着いた。
「おばあちゃん、おばあちゃん! ミルクを持ってきたんだよ!」
「ヘムンレックツォレルェッチ! おやまあずいぶん少ないねえ。
 でもなんにせよありがとう」


ヘムンレックツォレルェッチは空の瓶を抱えて帰っていった。



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