そしてついにガイダンスの日。推薦合格者となればやはり人は少ない。特にヒーロ科だけ違うことをやらされるみたいで、他の科とは別室待機になってしまった。

「………………」

少し早く来すぎてしまったみたいで、まだ教室には誰もいない。いやこれはビッグチャンスでは。1番最初に教室に入ってきた人に声をかけられる。つまり、友達なし回避…!そう思っていると扉が静かに開かれる。そちらに顔を向ければ髪の毛を後ろでひとまとめにした女の子。女の子だ!
その子は自分が1番だと思っていたのか私を見ると少し驚いた顔をする。目が合ったので会釈をすると笑顔で近づいてきた。

「こんにちは」
「ごきげんよう。お隣、よろしいですか?」
「(ごきげんよう…!?)どうぞ!」

ありがとうございます、と腰掛けた彼女は八百万百ちゃんというらしい。

「ガイダンス、なにやるんだろうねえ…」
「実技があるみたいですわね」
「運動着の替え持ってこいって相当だよね」

そのまま百ちゃんとおしゃべりしているとさらに何人か一気に教室に入ってきて、最後に教室に足を踏み入れたのは、

「(プレゼント・マイクだ!)」
「さあみんな集まったか!!!!?雄英高校ヒーロ科!!入学前ガイダンスを始めるぜ!!!!!YEAHHHHHHHHHH!!!!」

シン。

「おーーーっっと一般入試に引き続きツレねえな!!ガイダンスの概要を説明するから聞いてくれよな!!!」

先頭に紙が渡されて回ってくる。なにやら写真がついている。なんだこれ…?
説明を聞けば、先日行われた一般入試の実技試験らしい。仮想敵を行動不能にすればポイントがもらえるが、ギミックとかお邪魔虫もいる。
…なるほど。面白そうだ。
実技前に簡単な入学前説明も終えて、さて!とプレゼントマイクの声量が再び上がった。

「説明はフィニッシュだ!何か質問お便りがあるリスナーはいるか!!!?いないな!!!!さっそくお楽しみ!実技だ!!移動してくれ!!!!!ヒアウィゴー!!!」

雄英には模擬市街地があるらしい。入試は数グループに分かれて同時に行われたらしいし、どんだけ広いんだこの校舎。用意したジャージに着替えて準備運動をする。

「はいスタートー!」

突然轟いたプレゼントマイクの声に周りは瞬時に対応して走り出した。条件反射でついて行ってしまったのでスタートは悪くない。

「…!わっ!!!」

何人かがバラバラになったころ、ズガン!と目の前に何かが降ってくる。


『標的補足!』
「1Pか!」

特徴はすばしっこいと聞いている。咄嗟に1P敵の四方に雲を出現させて、自分は新たに出した雲に乗って1P敵の真上に飛ぶ。

「いっけええええ!!」

手をかざせば取り囲んでいた雲から強烈なイナズマが仮想敵に襲いかかる。黒焦げになって倒れるのを確認した。倒した!そのまま仮想敵を探しに雲を動かせば周りからも戦闘音が響いている。
仮想敵が何体用意されてるか分からない。これは、早めにたくさん片付けておかないとキツそう…!

市街地を飛び回りながら見かけた仮想敵に次々と雷を当てていく。これで50Pいった!フッと自分に影が差し掛かったと思えば真後ろに2P敵。飛べるヤツもいたらしい。殴りかかろうとしてくる仮想敵と自分との間に乱気流を発生させて軌道を逸らす。そのまま空振りになった仮想敵の背後にまわりこみ拳まわりに台風のような風の塊を巻き付けて思いっきり真下に投げつける。
地面にめり込んだのを確認して次の仮想敵を探す。他もおおかた周りの人たちに片付けられたようだった。
その時、ふよふよ浮いてる3Pを見つける。雷で叩くには少し遠すぎる距離だ。時間もない。直接殴りに行った方がいいな…雲を操って3Pの後ろに回り込む。めちゃくちゃデカいなコイツ。

「ほっ…!」

大きく振りかぶって3Pに殴りかかった瞬間、

パキン、

「!?〜〜〜〜〜〜いッ!!!!!」

右腕が肩まで、仮想敵と共に凍ったのだ。痛いとか、冷たいとか、そんなもんじゃない。動かない自分の右腕を呆然と見つめる。すると3Pの反対側、正面から人影が出てきた。その人は一緒に凍らされた私に気づくと、慌てて駆け寄ってくる。

「!!悪ィ!大丈夫か!?」
「…っ、う」
「無理に動くな、割れる」

かざされた左腕からボッ、と炎が出る。氷も出せて炎も出せんのかよ。強いな。一気に温められた氷はすぐに溶けていく。段々と腕も見えてきたが、一言で言うとヤバい。確実に凍傷である。
既に感覚のなくなった腕を見てヘナヘナと座り込む、が、男の子が慌てて肩を支えてくれる。

「終了だ!!」

そこで、プレゼントマイクの声が響き渡る。歩けるか?と問いかけてくる男の子に力なく頷く。
激痛にとめどなく汗が流れるのを俺ので悪い、と言いながらハンカチで拭いてくれた。ふんわりかおった柔軟剤は人の家の匂いがした。
やっとの事でスタート地点まで戻れば既にリカバリーガールが待機していた。

「おや、怪我したのかい?」
「俺が個性で怪我させました」

お願いします、となぜか私の代わりに頭を下げる男の子。そっと座らされるとずいっとリカバリーガールの顔が近づいてきた。こ、、、これは、、、!

「チューーーーーーー!!!」
「!????!!?」

唐突のキス(といっても右腕)で急に肌の色が元に戻る。治った…?噂には聞いていたけど本当に怪我を治すことが出来るんだ…

「これで治ったよ」
「(痛くない…)ありがとうございま、す…?」

立ち上がろうとしたら目の前がクラっとしてその場にへたり込む。先程まではなかった疲れがどっときた。右腕の痛みでわからなかっただけ?個性を使いすぎた?

「…??、え、?」
「無理するんじゃないよ、あんたの体力を使って治したんだ。あんだけの怪我治せばそりゃあ体力もなくなる」

リカバリーガールの個性は治すんじゃなくて、治癒力を強化して治させるのか。つまり、そんだけ状態が悪かったということ。あぶねえ…

「今日は早く帰って休みなさい」
「あ、はい…」

今日はもうそのまま解散らしい。お疲れ様、と労ってくれたリカバリーガールにお辞儀をして見送る。はー…と息を吐くと、後ろからおい、と声をかけられた。振り向けば先程の髪の毛ツートン男子。座り込んでるわたしに合わせるためかしゃがんでくれる。

「あ、」
「本当に悪かった、仮想敵しか確認してなかったから全力で当てちまった」
「いやいや!わたしも不注意だった!運んでくれてありがとね」
「まだ歩けねえだろ、更衣室の前まで送る」
「わ」

もう一度さっきみたいに肩を持ち上げられる。完全に力抜いてたから重かっただろうに、力持ちだな…!

「あ、ありがとう、えっと…」
「轟焦凍。お前は?」
「轟くん…わたしは名字名前、よろしく」





帰りはなんと百ちゃんが電気で動くタイプの車椅子をくれました。どこからもってきたんだろう?



20200607

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