あの雄英高校ヒーロ科に推薦で、合格した。いやもちろん中学2年後期の大事な時期に転校、引越し、、、いろいろあったけど内申点とか生活態度とかもろもろ頑張ってきた、努力の結果実ったわけで最高に嬉しいし両親親戚地元にいる親友、学校の友達みんなも祝ってくれた、のだが。推薦組は受かったから遊べる〜!という甘ったれた考えは通用しないのが雄英のヒーロ科だった。

合格通知が届いたその1週間後。再び雄英から送られてきた文には、でかでかと入学前ガイダンスと書かれていた。もちろんどこの学校でも入学前ガイダンスくらいあるだろう。しかし持ち物欄にはジャージなどの運動着(ジャンプスーツ等不可)替えも含む、と書いてあるのだ。……ガイダンスってあれじゃないの、みんな椅子に座って人の話聞くとか、ちょっとめんどくさいやつじゃないの。運動着+替えってどういうこと。明らかになにかさせる気でしょ…!!
推薦の時みたいな障害物レース、いやだな…
そんな杞憂も周りからしてみれば、あの雄英だからやらせることも日本最高峰!乗り越えないと!とよくわからん励ましをしてくれる。みんな他人事だからって…!
ガイダンスは一般入試の少し後に行われるらしい。それまで自分の個性を少しでも磨いておいた方がいいだろう。そして問題はもうひとつ――

「名前、もう家は探したの?」
「ん?うん」

実家から雄英まで片道2時間と少し、とてもではないが毎日通いたい距離ではない。そう、春からは一人暮らしデビューしてしまうのだ。

「どんな部屋にしたの?」
「普通に1Kの部屋にしたよ」

手にしていた端末を機械に指して空中に画面を表示させる。普通家探しは親が口を出してくるものだと思っていたのだが、うちの親は好きなところにしなさい、と上限金額だけ伝えられただけだ。ありがたく好きな場所が選べるわけだが、逆に少し不安にもなるのだ。優柔不断だから。

「ここ。学校から電車で30分くらいのところ」
「電車で30分?」

そんな遠い所にするの?と眉を顰めるお母さん。学校に近いところは少し家賃が高いのだ。いくら上限金額を言ってくれてても子供としては少しでも親の負担を軽くしたいという気持ちもある。
まああとは去年まで住んでたところに近いから土地勘があっていいかな、とも思っている。

「ダメよ」
「へっ?」
「学校から近いところにしなさい」

ちょっと拗ねたように口を尖らせたお母さんはもしかしてお金のこと気を使ってるの…?とジト目で見てくる。慌ててそういうことではない、と返せば、

「嘘よ嘘。アンタ嘘つく時目が合わないもの」
「はっ…!?」

急に人のクセ見抜いてくるって母親の能力…!!、じゃなくて、焦ってお母さんを見れば自分の携帯を取り出して何かしている。しばらく操作しているのを見ているとホラ、と差し出してきた。

「雄英から徒歩8分。あんたロフト好きでしょ?ロフト付きで風呂トイレ別のダイニングキッチン付き」
「は?は?はあああ?」
「ここに決定ね」

徒歩8分っていうのがまだ気に入らないけど。まだ拗ねた顔で言い切れば見学の日取りの申し込みをし始める。それを呆然と眺めていることしかできなかった。好きなところにしろって言ったのはなんだったのだ!

「決まったわよ〜。なんならガイダンスの日、ここに決めたら向こう泊まってくれば?」
「な、ん…!?」
「これから住むんだし早めになれた方がいいわよね?ハイ決定〜!私はその日お父さんと出かけてきまーす!」

イエーイ!と求められたハイタッチに応えながらも(やらないと怒られる)逆らうことは出来ないことなんてわかってるので引越しの準備の予定を考えていた。

こんな勝手な母親だけど、地元ではお父さんとともに活躍する夫婦ヒーローであった。なんでも去年の引越しは地元は雄英に近いところにあったせいか敵の出現が低いため引っ越したというのだ。
お父さんは大気を操る力、お母さんは水を操る個性で、自然の脅威をいとも簡単に生み出せるこのチートコンビは、敵などものともせずに倒していってしまう。そして第四世代のわたしは、雲を自由に生み出して操れる。なんとなくお互いの個性をうまいこといただいたようだけど、私の両親は個性婚ではないらしい。

そんなことよりも、時間が無い。来年度から使うものと使わないものを分けるべく、部屋に戻った。




20200607

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