決断が下される。






ひとしきり土方さんがいじられたあと、再び重苦しい空気が流れた。


「事情はわかった。お前が俺たちの知っている"名字名前"ではないことは認めてやる」


ちなみに認めた理由は土方さんの過去をひとつ話してしまったのが決定打となった。


「…だが。お前には"名字名前"として変わらずに過ごし、隊務もやってもらう。一般隊士にも言わない」

「………え?」


"名字名前"はどうであったかわからないが"私"には刀は扱えない。
隊務に出ても足を引っ張るだけだろうに。

そんな私の様子に気づいたのか左之さんが、


「敵さんに"新選組の名字名前"が戦えなくなったと知られればどうなると思う?」

「……あ」


そういうことか。
伊達に二番組組長補佐をやっていたわけではないということだ。


「…戦力が、へる」

「そういうこった」

「………でも、」


確実に一般隊士にもばれてしまうだろう。そうなれば不信感が芽生える。
そう言おうとすると急に頭を掴まれた。


「わっ…!」

「心配すんな!俺がどうにかしてやっから!」

「ま、新八には無理だろうから俺が守ってやるよ」


新八と左之さんに思いっきり頭を撫でられた。
髪が抜けそうなほどに。


「は、はは…」


これが二人の優しさだとわかったからやめさせるのもどうかと思った…けどそろそろ毛根が危ない。


「ねえ、名前がはげちゃうよ」


そう言って二人を止めたのは総司だった。


「おお、悪い、名前」
「大丈夫か?」


慌てて手をどけた二人は私の頭を心配そうに見つめる。
…っていうか私頭怪我してんのに。
苦笑いして大丈夫ということを伝えて、改めて土方さんに向き直る。


「…っ、」
「!おい、無理すんな」


痛む身体に力をいれて深々と頭を下げる。


「…これから、お世話になります」





運命なら受け入れよ、と誰かは言った。

「なに言ってんだ、俺らは仲間だろ」そう言って笑ってくれたみんなが暖かかった。



20120218

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