問題は山積み。





あれから新八に抱きつかれて…というかのしかかられて潰れたかえるみたいになっているところを巡察が終わって帰ってきた平助と左之さんに救出された。

それから平助から土方さんに呼ばれてると言われた新八が慌てて出ていって、一緒に呼ばれていた平助も出ていった。


…ということで、左之さんとわたしが残った。


「大丈夫だったか?」
「傷開くかと…」
「はは!洒落になんねェな」


そういって頭を撫でてくれる彼はやっぱり優しかった。


「で?」
「へ?」
「何を隠してんだ?…そんな辛気臭ェ顔してんなよ」


…人の気持ちなんかお見通しらしい。
俯いた私の頭をぽんぽん叩きながら顔を覗き込んできたから目が合った。


「…山南さんは記憶が飛んだとか言ってたが…実際はどうなんだ?」
「っ…」
「言ってみろよ、名前。話したほうが楽になるぜ?」


な?、と微笑む姿に泣きそうになる。
言ってわかってもらえるかはわからない、けど。勇気を振り絞って口を開く。


「わたし…ね、」
「おう。言ってみな」
「左之さんたちが知ってる"名字名前"じゃない」


空気が止まった気がした。


「は…?お前はお前じゃねえか」
「…そうなるのは当たり前だと思う。…でも本当なの」

新選組のことは知識としてしか知らない。"私"にはみんなと過ごした記憶がない。わからないとか、覚えてないんじゃなくて、知らないの。
そう言えば、左之さんが息を飲む音が聞こえた。

(…当たり前、だよね)

誰も信じられるわけがない。ついこの間まで一緒にいた人間がその人じゃない、なんて。


「…………」
「…………」
「信じられ、ないよね…ごめんなさい」


そういってその場を後にしたいが生憎わたしには行く宛もなければ頼れる人もいない。
本当の、独りぼっち。

そして訪れた沈黙に耐えきれなくなって口を開こうとしたとき、


「何か隠してるとは思ってたけどな…」
「……」


再び頭に乗った暖かい重み。


「ま、冗談言ってるみたいじゃねえし…信じるよ」
「……え」
「もしお前が俺の知ってる名前じゃなくてもお前を見捨てやしないさ」


そう言って微笑んだ左之さんを見つめることしかできなかった。



優しさだけが伝わって
(思わずその手を)
(握ってしまった)



20120218

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -