やっと新八の誤解がとけてほっと一息ついた頃。


「はあ、疲れた」
「悪かったな、見張りついてやれねえで」


隣を歩いていた左之さんにくしゃっと頭を撫でられる。
左之さんの頭の撫で方はたまに痛い時があるけど優しく撫でてくれるから心地よくてすきだ。


「そんな!むしろいつもごめんね」


わたしが男だったらよかったのにね、と笑うと左之さんは少し苦笑いになって、


「やめとけ、お前が男だったら新八が泣くぞ?」


思わず泣いてる新八を想像して笑ってしまった。
でもたまに、平助や左之さん、新八を見ているとやっぱり男だったらよかったなあ、とか思うときもある。男は男同士なにか見えない大事なものがあるから。


「それに、俺だってお前が女のほうがいい。じゃなきゃ屯所がむさ苦しくて仕方ねえ」
「わたしじゃあ新八一人のむさ苦しさも消せないよ?」
「そんなこたねえよ。名前は充分かわいいぜ?」
「…………!」


………反則だ…!!
思わず顔が赤くなってしまったけれど仕方ない。
この顔を見られたくなくて俯くと突然後ろに引っ張られた。


「ちょっと。名前を口説くのやめてくれない?」
「…総司?」


後ろから抱きつかれて見上げると不機嫌そうな総司の顔。


「はいはい、悪かったって」


左之さんは呆れた顔をして肩をすくめると、再び私の頭に手を置いて、


「名前。首だけ見えないようにしとけよ?」


新八に見られたらまためんどくせえぞ?そう言って行ってしまった。


「…首?」


なんのことだろうと首を傾げていると総司が意味ありげに笑っている。


「総司?なんかしってるの?」
「さあ?」


どうだろうね、と私を抱き締めたまま笑う。


「さあって…………!」


さっき左之さんは首って言った?風呂場で総司はどこに触れていた?


漸く意味がわかって総司の手をほどき自室へ向かう。
慌て部屋の鏡で首筋を見るとそこには赤い痕が。
これが虫刺されだと間違えるほど子供ではないわたしはすぐに理解してニヤニヤ笑いながらやってきた総司を見つけて、


「総司!!何してくれてるの!!!」


と怒鳴った。
総司は声を出して笑うだけで代わりにスパン!と襖の開ける音がして、


「うるせえ!なに騒いでやがるんだ!時間を考えろ!!!」


と鬼の形相をした土方さんが出てきた。
さらにその怒声のせいで源さんに怒られるはめとなったのだ。













20121008

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