コツコツ、と2人分の足音が執行官寮に響く。

「悪いな監視官、部屋まで来させてしまって」
「いえ、謝らないでください。むしろ休日にお邪魔してしまってすみません」

カムイと名乗る男の事件。それに関する資料を東金さんと手分けして探していた。カムイの過去であろう事故についての資料を手に入れたと連絡があったのはつい先ほど。
同期の常守は別件で外に出てしまっている。ちょうど夜勤に来た霜月に交代を告げられ退勤したその足で東金さんの部屋に向かう。
本当はデータを送ってもらえばよかったのだが、どうせならすぐ気づいた事を誰かと話し合うべきだ。
そう思った休日であっただろう東金さんが部屋へと呼んでくれた。

「これでカムイの目的と動向を掴めればいいんですけど…」
「どうだろうな。どちらにしろシビュラに認識されないことには奴を裁くことはできん」

コツ、と足音が止まる。パネルを操作すれば扉のロックが開く。先に中へ入った東金さんに続いてお邪魔します、と足を踏み入れた。
通されてすぐにソファへ促されるままに座る。

「早速だが、」

そう始めた東金さんはデータを立ち上げて自分も座る。
礼を言って資料に目を通し始めて少し。

「…監視官、貴女も色相が濁りにくいと聞いたが」
「ああ、はい。といっても朱…常守監視官と違って常にクリアカラーっていうんじゃなくて、潜在犯になるギリギリの所まであがってもそれ以上には行かない、と言った方が正しいですかね」

つまり、私は潜在犯にギリギリのラインでならない。
私はデータに目を通しながら答えれば東金さんはほお、と返す。

この質問はよくされる。
幼い頃両親を目の前で惨殺されても犯罪係数は一定の値まで行ってすぐに下がった。
どんなに精神負荷がかかっても潜在犯になる手前で止まる。

「なるほど、ではどんなことをしても貴女は黒くならない、と」

その言葉でふと、後輩である霜月と昼を一緒にした時に東金は信用できない、とボソリと呟いたことを思い出した。

「…東金さん?」

顔を上げれば、そこには普段の彼からは想像できない程の歪んだ笑い顔。


「――ッ、」



「では、どうすれば黒く染まるのか確かめたくなるのが人間だろう?」


その言葉と共に伸びてきた腕を咄嗟に避けようと後ろに身体を反らせる、が、それがいけなかった。

机を乗り越えてきた身体にそのままのしかかられる。
身動き出来なくなった私の腕を拘束して一気にソファへと押し倒す。

「東金さん、なにを、」

動揺を隠せないまま目の前の男を見上げる。
喉を鳴らして笑う東金さんは私を見下ろして言い放つ。

「俺がお前を黒く染める」

――こんなに楽しいこと、他にないだろう?


歪んだ笑みをそのままに仰向けにされて剥き出しになっている喉元をねっとりと舐められる。

「っ、やめて、」

ぞわりと身体を走る悪寒に抵抗をしなければ、と押さえつけられていた両腕を暴れさせてもがけば喉元から不機嫌な舌打ちが聞こえてきた。

ガリ、

「――いっ、」

鎖骨に鋭い痛みが走り顔が歪む。唐突なそれに一瞬身体が強ばって抵抗が止まってしまった隙に両腕を縛り付けられてしまった。

「い、や…っ」

股関節の上に乗られているせいで足を動かすこともできず、抵抗する術を全て奪われた。
ジャケットの前を開けられてそのままシャツへと手がかかる。

「やめてくださ…っ、やめて、……やめろ!!!」

叫ぶだけの抵抗は一層加虐的な笑みを深くさせるだけでボタンを外していく手を止めることはない。
焦らすかのようにゆっくりと動く指は遂に最後のボタンを外した。
いくら適温に設定されている部屋だろうと纏う物がなくなってしまった上半身を包む外気に少し身震いする。

「っ、う…」

再び首元に口づけられて舐め回され時折吸いつかれる音が鼓膜を震わす。
同時に伸ばされた腕はするすると剥き出しになった腹を撫でていく。
その手は遂に最後の砦であった下着に触って、その上からぐに、と揉まれれば、微かな痺れが伝わってくる。

「東…金、さん…っ」

耳の付け根を舐められていたかと思えば段々と降りてきてピリッとした痛みが襲う。思いっきり噛まれて鎖骨に傷ができているのだろう、そのまま傷をなぞられていく。
もぞもぞと動く男の垂らされていた髪が少し敏感になってきている肌を微かに刺激する。

「もう抵抗はしないのか?」

したくても、できる状態ではない。
顔上げた東金さんはおもしろそうに笑って口元を拭う。

「どいて」
「…口だけの抵抗は、抵抗とは言わない」

その言葉に顔を歪めればまた嗤う。
背中に腕を回されて訪れた胸の開放感を抵抗する術もなく見つめるしかなかった。



***


「は…ッ、あ…!!…んあっ」

ギッ、ギッ、というソファの悲鳴も耳には入ってこない。
代わりに口から漏れる自分の喘ぎ声と、下から聞こえる粘着質な音が聴覚を犯す。

目の前で顔色一つ変えず動く東金さんは容赦なく私を攻め立てていく。
いつの間にか拘束されていた腕は自由になっていても、もう何回も達している私は既に限界をむかえていて抵抗する力さえ残っていない。
それでも必死に東金さんを引きはがそうとその胸を押そうとしたけれど、刺激の強さにきっちり着こまれているシャツをすがりつくように握って皺を作っている。

「も、……っいや、っ!あ、あ!」

容赦なく出し入れされているかと思えば、時折奥の方にぐりぐりと捩じ込まれ、その度に大きく身体が跳ねる。
既に知り尽くされている中を執拗に抉ろうとするその楔を止める方法を私は知らない。
ただせめてもの抵抗として達した時に声をあげないように唇を噛むことしかできないのだ。

「〜〜〜〜〜〜〜ッ、んうう!!」
「――っ、」

何度目かわからない絶頂に襲われてキツく締めつける中、東金さんは少し苦しそうにして自分は波に耐える。
そしてすぐに再開される律動に果てたばかりの身体が悲鳴をあげた。

「抜、いてっ…もう嫌……っ!!あ、っ!」

腰の動きを止めないままおもむろに私をスキャンし始めた東金さんはその数値を見て鼻を鳴らす。

「少し上がったな。だが、まだまだ黒にはならない」

――だが、ここで快楽に従順になられてはつまらないな

そう漏らした東金さんは結合部の少し上にある芽をぐり、と捏ねる。

「〜〜〜〜〜っ!!!!ああああ!!」
「く、っ」

途端に再び身体を痙攣させながら達した中で温かいものがお腹の中に広がる。

「俺が染めるのが先かお前が耐え抜くのか見物だな、名字名前?」

その言葉を頭で理解する前に視界が霞んでそのまま意識を落とした。





paralyze


20141228

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -