強化人間。
心がなくて、ただの殺戮兵器、のような。冷たくて無機質な人間のイメージがある。




「ナマエじゃん。なにしてんの」



MSの整備も兼ねてデッキへ来て早1時間。あらかた片付いて休憩室のベンチに腰掛けぼーっとしていると声をかけられた。
と同時にふわっ、と柔らかいものに包まれる。
顔を上げればアウルがいて、隣を見ればステラ。


「ちょうど整備終わったからちょっと休憩」
「ふーん、」


擦り寄ってくるステラの綺麗な金髪を撫でながら答えれば、アウルはちらりとステラの方をみて相づちをうった。


「アウルたちは?」
「僕はこのバカステラがまたどっかでぼけーって座ってるから連れてきたんだよ」
「こら」


バカ、という言葉に力を入れたアウルにステラはムッと視線をあげた。それを見てため息をついて不機嫌顔のアウルをたしなめる。


「じゃあそれが終わったら今日は終わりなわけ?」
「うーん、まあ、そっかな?」


それ、とは私の横に置いてある報告書のことである。
ほかに溜まってた仕事は終わらせたはずだし、新しく仕事が増えることもなさそうだ。

肯定すれば、アウルの少し不機嫌気味な顔が笑顔になった。


「じゃあ、あとで僕の部屋きて」
「え、あ、わかった」
「ほら!行くぞステラ!ネオが待ってる!」
「………!ネオ」


大佐の名前が出た瞬間パッと顔を輝かせたステラ。すぐに名残惜しそうに私を見つめるがいっておいで、と言えば笑顔で頷いて離れていった。


「ばいばい、ナマエ」
「じゃーね、忘れないでよ」


それぞれに返事を返してため息をついて背もたれに身体を預ける。


「忘れられてなかった、か…よかった」


アウルと私は恋人関係、になる。しかし相手は強化人間。何も感じずに人を殺していくための、軍の生体兵器。
最初はそう割り切って3人と接していた。だけどどんどん日数を重ねていくうちに、強化人間にも個性があって、"人間"だということに気づいてしまった。
そう気づいてしまった時にはもう、アウルに惹かれていて、彼もまた同じように私のことを好きになっていて。
軍の中で恋人関係があっては仕事に支障が出てしまう。ひっそり付き合おう、と言った矢先、秘密を作れない性格なのかアウルは口を滑らせて公にしてしまった。
それだけでは軍は黙認してくれていた。アウルがいつも通り敵の軍隊を崩したから。

しかし次第に恋人となってから欲が出てきてしまった。アウルが"ベッド"へ戻りたがらなくなったのだ。
"調整"が思うように行えない軍は、アウルが"ベッド"で寝た時、その記憶から恋人関係というものを消してしまった。
大佐の優しさか、私についての記憶は消されていなかったが、何も知らずに翌日話し掛ければただの友人、に成り下がっていて。それはそれはつらいもので、何日間かはその現実を受け入れられなくて食事が喉を通らなかった。
しかし再び恋人関係になるのはあまり時間はかからなかった。身体の記憶、というものだろうか。

だから私はアウルと1日の初めに会うまでは…記憶が消されていないか確認できるまで安心できない。

相手は強化人間だからしかたない、そう言い聞かせたってつらいものはつらい。



***



「なに、考えてるの」
「!」


ハッと我に帰れば目の前には不機嫌なアウルの顔。


「あ、うん、…ごめん」


不機嫌に目を細めている顔の向こう側には天井があって、その部屋の主のアウルはわたしの上に覆い被さっている。


「疲れてんの?」
「んーん、大丈夫」


首を振って笑えば降ってくる唇。
目を閉じてそれを受け入れれば間髪いれずに侵入してきた生ぬるいそれ。


「、…っ……ふ」


息苦しくて顔を離そうとすれば後頭部に回った手のひらがそれを阻止した。
支配されている心地に悔しくなって自分から攻め立てれば一瞬驚いたアウルもどうだとさらに深く攻め立ててくる。
さすがにもういいかと口を離せばすぐに抱き締めてきた。


「…なんか最近元気ない?」
「え…?」


至近距離から顔を覗き込まれて綺麗な水色が目の前に広がる。
いつも他の人に向けているものより少しだけ気遣いが含まれているその視線に罪悪感を感じた。


「なにが?大丈夫……ひっ、!」


心配しないで、言葉が放たれる前にアウルの手が身体に直に触れていた。


「嘘、つかないでよね」
「嘘なん、か……あっ、ぅ」


不機嫌のせいか少し乱暴に私の身体を弄るその手に反応して熱くなっていくのがわかる。

気がつけば上半身の服はもはや意味を成していなかった。それを気にする暇もなく私の身体を知り尽くした手に意識を持って行かれていって、じわり、と生理的な涙が浮かんでいく。


「ま、言いたくないんならいいけどね」


そう言いつつも不機嫌顔のアウルは腕を下のほうへと伸ばし、簡単に布を取り払っていった。


「ひ、………んっ………っ」
「どうせさー、僕のことでしょ?」
「……!!……うあ…っ」
「僕が…強化人間だから?」


その言葉に一瞬息が詰まった。ハッとアウルの顔を見ようとしたけれど愛撫を続けているせいで顔が良く見えない。
ゆるく与えられる刺激に身もだえしながらアウルに触れようと腕を伸ばす。


「ごめんね?僕がもっと普通の人間だったらよかった?それならナマエを不安にさせることもなかった?」
「アウ、ル……ッ!!ん、あ!!!!」


その手が到達するまえに一番敏感なところをぎゅっと捕まれて視界が白くはじけた。


「でも」


散々弄り回した逆の手のひらをわたしの顔に添えて思いっきり顔を近づけてきて、息のかかる距離で、


「だからってナマエが僕から離れていく理由にはなんないし、僕がナマエから離れる理由にもならない
何があっても僕はナマエに戻ってくる」
「………!!!!」


その言葉に何も言えないでアウルのニッと笑った顔を見ていれば下腹部がものすごい質量に貫かれた。


「ひっ、あっ……〜〜〜っ!!!」


容赦なく出し入れされるその刺激に全身が沸騰したように熱くなって視界がチカチカスパークする。
霞む視界に写ったアウルの顔は悩ましげで、その顔を見た瞬間苦しくなってその首に抱きつく。


「う、わ…っ、そんな締めないでよ……っ」
「アウル……もっ……あ!!」


さらに苦しく歪んだアウルはわたしの足を掴んで肩に乗せて深く深く貫いてきて、喉から声にならないままの息が出て行く。
アウルも限界が近いのかどんどんスピードがあげられていってその摩擦に身体が痙攣しはじめる。


「アウル……っ、アウル…!〜〜ッッ!!!!!」
「はっ……っ……、く」


同時に果てて抱き合ったまま布団へぐったりと沈み込む。部屋の中は2人の荒い息だけが聞こえて自分がちゃんと酸素を吸えているのか不安になる。


「ナマエ……」


早くも息を整えたアウルが隣で呟く。


「僕、もっと頑張るから、さ」


――ナマエも僕を信じてよね


「………………」


声を出さないまま大きくうなずいて回していた腕に力を込める。


「ごめん、ありがとう……」
「まーね?これからはやめてよね、辛気くさい顔で僕の事見るの」


そう鼻で笑って離れていくアウルを目で追えば、散らばった軍服に腕を通し始めていた。

洗面所の方へ行ったかと思えば濡れタオルと乾いたタオルを持ってきてわたしの身体を綺麗に拭いてくれて。
そっと肩に上着をかけてくれた。


「僕、"ベッド"いかなきゃ」
「う、ん」
「また明日、ね」


"ベッド"という単語に不安をよぎらせたのが伝わったのか軽くキスをして大丈夫だってば、と言い残して部屋を去って行った。
まだ少し不安はあったけど、戻ってくる、という言葉に少し安心してベッドに潜り込んで目を閉じた。




掴めぬ青









*******
相互記念に悠希さんに贈ります。
だいぶ遅くなった上に誰コレ状態のアウルな上に、ぬるすぎる性描写に、まとまりのないオチで申し訳ないです…悠希さんに限り苦情は受け付けます…
お粗末さまでした…!


20130311




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