今日も今日とて正十字騎士團京都出張所は大忙しである。


「名字さん!タオルと薬草たのんます!」

「はい!」


悪魔と戦う仕事なだけあって日々怪我人は絶えない。
医工騎士の私はその怪我人たちを治療する。…のだが。


「おう名前!はよこっちやってくれやー」

「…………」

「…なんやその嫌そうな顔ォ」


視界の端にいた嫌でも目につく金色。
左肩から血を滲ませつつ偉そうに胡座かいてる、バカ。


「…また怪我したの……」

「おん!今回も聞かせてやってもええで?俺の武勇伝!」


はっはっは、と無邪気に笑っている顔に本気で蹴りを一発いれてもいいだろうか。


「(これだからこのアホは…)」

「なんや今失礼なこと考えとったやろ」

「別に?」

ほら腕出して、と言って血まみれの肩を見る。
聖水をかけて傷口を綺麗にしていって、出てきた傷口にため息をつく。


「あんたは毎回毎回…」

「なんやねん」

「少しは怪我しないことを考えなさいよ」

「だーかーらー!明陀の男としての勲章や言うとるや…いだだだだだっ!」


傷口を脱脂綿でごっしごし拭いてやると頭を叩かれた!


「いった!」

「こっちの台詞や!怪我人相手になにしとん!!!」

「ハア?明陀の男なんでしょ?」


このくらい耐えてみやがれ。そういうとこめかみに青筋たてて笑っている。


「お前…あとで覚えてろや」

「知らないって、の!」

「って!」


包帯をぎゅっ、と巻いて処置を終わらせた。


「終わりましたよドアホの金造くん」

「名前…お前…!!」

「ドアホは医工騎士じゃ治せないのが残念で仕方ないわ」


そう言ってのけると


「せやなあ。名前の言う通りや」

と。後ろから声がした。


「柔兄ィ…」

「柔造さん!」

「おう金造。お前また怪我したんやて?」

「そうなんですよ!」


柔造さんもこのドアホになんとか言ってください、と言おうとしたら、


「毎回毎回お前が任務に出ると心配する名前の事も考えや」


…………は?


「じゅ…柔造さん?」

「名前も名前やで?そんな心配しはるんなら直接気をつけろ言えばええんやで」


な?、柔造さんはそう言って爽やかな笑顔で私の頭を撫でて去っていった。


「……………」

「……………」


なんつー爆弾を…!!!!!
おかげで金造がニヤニヤこっちを見てくる。誰がやっぱりこのドアホに蹴りを一発いれてくれ。


「ほお…俺の心配を」

「うるさい!」

「うぼォ!?」

にやけ面にタオルを投げつける。


「だ…だいたい毎回毎回怪我してくる金造が悪い!」

「ああ!?俺かて戦っとるんや!仕方ないやろ!」

「だから馬鹿正直に突っ込むなって言ってんのよこのドアホ!!!!」

「ドアホドアホてお前…!」


金造が口を開いた途端私を呼ぶ声が。
慌てて返事をすると立ち上がって金造を見下ろす。


「私忙しいからドアホに構ってる暇はないの!」

「なんっ…あだっ!!!!」


モーションかけて金髪めがけて投げつける。
ってえー、とそれを拾い上げて見る怪訝そうな顔がアホ面で笑える、とは口に出して言えない。


「…なんやコレ」

「…塗り薬!ご飯たべたらやってあげるから持ってきて」

「お…おん…」


次怪我したら許さない、と一言残して部屋を出た。




精一杯の愛情表現



(お前素直にならんと)
(お、柔兄…何が)
(毎回毎回自分に時間かけさせて忙しい名前に休憩させようとしてんのやろ)
(はァ!?んなわけ…!)
(はっはっはっ)





20120218


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