折原臨也に拾われて2週間がたった。

助手にならないか、と言われてほぼ無理矢理連れてこられたにもかかわらず彼は私には何も言わずさせずにそのままで、私は住むところさえ違うが今までとなんら変わらない生活をしていた。
さすがに中学の友達にはあの"折原臨也"のところに厄介になっているとは言えずアパートを変えたがまだ落ち着いてないから住所は教えられない、と言っておいた。
そんな感じで1週間、また1週間と過ぎてしまい、すでに環境に慣れつつあった。


「…んむ、」


目が覚めて上半身を起こして軽く伸びをするとベッドから抜け出す。
臨也はもう起きているようで、扉の向こうからキーボードを叩く音が聞こえる。
ちなみにこのベッドは臨也のだ。初日に私が折原家に来たとき、もちろんベッドなど一人暮しの家には1つしかなくて、一緒に寝るなどとほざく臨也をかわしてソファで眠りについたのだが、朝起きたらなぜかベッドの中で目の前には臨也がいたのだ。
それが5日間続けばさすがに観念して最初からベッドで寝るようになった。


欠伸をしながらドアを開けるとちょうどコーヒーを飲む臨也と目があった。


「おはよう、名前」
「…おはようございます」


正直に言うとたとえ住食を共にしていてもこの男を信用しているわけではなくて。
いかにも笑ってますという笑顔を見ずに台所へ向かう。
そんな私をみて気持ち悪い笑顔をやめた臨也はいつも通りの笑顔に戻る。


「…君って本当に愛想がないよねえ」
「折原さんに愛想振り撒いて意味あります?」


すでに勝手がわかるようになった台所で冷蔵庫の中のオレンジジュースを取り出す。


「一応俺に養ってもらってるとか思ってないの?」
「それは感謝してるっちゃしてますけどそれとこれとは別です」


オレンジジュースをコップに注ぎながら返すと臨也は別段気に障ったような反応は見せずにそのままの笑みで私を見ていた。

ここ数週間でいくつかわかったことがある。
折原臨也がどうしようもない気違いだということ。
自分が楽しむためなら冷酷非道に他の人間を盤上の駒のように扱うこと。

まあ、なんていうか、ただの変態だ。
初めて「俺は人間を愛している」なんて聞いたときは本気で大丈夫か心配になった。
なのにこの男の周りにはたくさんの女の子の信者がいて、その子達は異常なまでに臨也の言葉には従順である。


「…そんな冷めた顔で俺を見ないでくれないかな」


苦笑いを含んで言うその顔は本来の姿なのだろうか。この男の本心は見えない。


「…折原さんて、本当によくわからないですよね」


気づけばそう口から出ていて、それでも臨也は気分を害した様子もなく笑う。

なんとなくだけど、わたしがお母さんと連絡が取れなくなったのも、アパートが引き払われてたのも、この男が原因な気がするのだ。
どうしてそうなったかはわからないけど、じゃないとあんなタイミングよくわたしの名前と現状を知っている人間なんか現れない。

別にこの男を憎んだり怒りをぶつける気はないし、住食を与えてくれるだけマシとさえ思うことにした。


「なんでわたしを、ここに置こうと思ったんですか」


そう問うとやっぱりただ笑うだけでその真意はわからなかった。





真実は笑顔の裏側

(この男を信じるほどには)
(まだ時間が経っていない)




20120718

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