この学校の副会長、箕嶋冬夏。読みはみじまふゆか。
彼は……端的に言えば病んでいる。
仕事に出ない役員の中で俺が今一番出会いたくないのは、人の弱味を見透かし傷口を抉る質の悪い会計よりも、素で面倒な副会長なのかもしれない。





「!」

教室移動の途中、神妙な顔つきで話す転校生と副会長の姿が目に留まってしまった。まことに残念だが、彼らは俺の進行方向にぴったり沿っていた。
勿論、俺は一人だ。連れだって歩く友人など、とうにこの学校にはいなくなってしまった。こういうとき、一人が一番気不味いというに。

「俺は……この俺の性格はもう一生直らないでしょう」
「そんなこと言うなよ。きっと少しずつでも良くなっていける。いや、そうなるように俺は頑張るから。な、みんなを信じて」
「有り難う……君に言ってもらえると、そう思えるよ」
「いつか思うだけじゃなくなると良いな」
「ええ」

そう言葉を交わして二人は別れた。転校生は右の回廊に、それまでより幾分明るい表情になった副会長はこちらへと。
こちらの存在に気付いたらしい副会長の表情が強張る。きっと俺もそんな表情になっていることだろう。

「立ち聞きですか、随分と厭らしい人ですね貴方は」
「盗み聞きする気はなかった。ただ、君達が丁度進行方向を塞いでいたのだ。すまない」

明らさまに、信用ならないという目を向けられた。いつものことだと割り切るが。
そして暫く流れる沈黙。
相手が怒っている手前、こちらからは動き難い。謝罪はしたのだから黙っていないで何かしら答えてくれてもよいではないか。
所在なく視線を彼から外すと、途端に時間が気になった。失念していたが、こちらは移動教室の途中であった。

「……失礼する」
「……」

暫く進んで振り返ったとき、彼はまだその場に佇んでいた。


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