猫は気紛れに戯れる
「ね、俺とデジェルと、どっちが気持ち良い?」
荒々しく揺さぶる腰が止まったかと思えば、幼い獅子は組み敷いた獲物に問い掛けた
。
飢えた獣が餌を見るような目に見下ろされ、一瞬喉が引き攣るような錯覚に陥る。
あぁ、これは逃げられないなとカルディアは本能で悟った。
「んなの知るか、よ…っ」
「へぇ、分かんないのに感じてんだ」
器用に真似た氷の輪に自由を奪われ 無理やり掻き回されたそこは、もう随分とスムーズにレグルスの欲を受け入れている。
初めは苦痛でしかなかったものの、律動を繰り返されるうちに徐々に快楽を伴ってきたのも事実で、言い返す言葉が見付からないまま顔を背けた。
それが気に食わなかったのか首筋に歯を立てながら最奥を抉られ、予期しない快感に嬌声が上がる。
「…っあ、く…ッ」
まるで女のような高い声が断続的に口から漏れては耳に入ってくる。
(なんだこれ、気持ち悪い。自分より幾分も年下のガキに組み敷かれて、ろくに抵抗も出来ずに好き勝手にされるなんて。)
(ムカつく。こんな事するこの馬鹿も、その馬鹿に喘がされている、自分も。)
「ぁあッ、あ、レグ…っも、ゃめ…」
「やめない。カルディアが俺を見てくれるまで離さない。」
「な、に…言って…」
「好きだから。…俺の方が、ずっとずっとカルディアのこと見てる。俺だったら、あんなやつと違ってカルディアを傷付けたりしないの、にっ」
レグルスが目一杯腰を打ち付けると、一層カルディアの躯が跳ねた。
無理矢理犯されているはずなのに、行為に慣れてしまっている躯は快楽に正直に応える。
「ひぁっ…ん、ん…っ!」
「声、我慢しないでよ。もっと聴かせて。」
こちらが動けないのを良いことに好き放題されて、しかし事が始まってしまえば突き放すことも難しく せめてもの抵抗として口を噤んでみるものの、お構い無しにレグルスの指が侵入する。
「ふぁっ!?…ゃ、れぅるす、あ、ふ…、」
「カルディア、可愛い。」
親指を押し込んだ隙間から人差しも割り入れ、熱を持った舌先を撫でる。
ぞくりと背中が粟立つのと同時に、レグルスを受け入れる後孔がきゅう、と締まる。
「は、こんな所も気持ち良いんだ?」
歯列と内壁の間をなぞり また舌先を転がせば、閉じられない唇の端から透明な蜜が零れた。
(くそっ、何が傷付けたりしないだ。だったら今のこの状況はなんだよ。いきなり宮に押し掛けてきたと思ったらあいつの技で拘束して、一方的に身包み剥いで。…あぁもう、ムカつく。)
ぼんやりとした頭で目一杯の暴言を浮かべてみるが、その意志がレグルスに伝わるわけでもなく、余計に虚しくなるだけだった。
それでも自分が拒絶の意思を持っていることを示したくて、指に咬み付いた。
さすがに本気では気が引けたので多少は加減したものの、口腔内に鉄の味が滲む。
予想外の抵抗にレグルスは一瞬びくりと肩を震わせたが、その些細な行動が気に入らなかったようで、迷ったような顔をした後すぐに口元が弧を描く。
冥闘士よりもよっぽど質が悪いものに捕まったと、カルディアは自嘲気味に笑った。