fiction
「カルディアはさ、もし、願い事が何でも一つだけ叶うとしたらどうする?」
「願い事、ね…」
「うん、ただの空想話だけど」
「…お前は?」
「俺? …うーん、カルディアを女の子にしてもらう…とか?」
「何だそれ。俺の意志はお構いなしか」
「じゃあ、同性愛が世界的に認められるようにする、とか」
ちゃぷり、と音を立てて水面が揺れる。
狭い浴槽の中、カルディアの手が視界を遮った。
「…お前は、さ」
「うん?」
「結婚したり子供作ったりしたいのか」
「あんまり考えたことない、かな。俺の一番がカルディアで、カルディアの一番が俺なら、それでいい」
「…はっ、その割には現実的な願いだな」
真っ暗な視界の中、声は反響して濁り、カルディアが今、どんな顔をしているのかを教えてはくれない。
「だったら普通に女と付き合った方がいいんじゃないか、お前」
「……それ、本気で言ってるの?」
「俺は男で、それも心臓に疾患持ちの欠陥品だ。俺と付き合うメリットなんて何も無いだろ」
「…っ、メリットとか、そんなの関係無しにカルディアが好きで、それじゃ駄目なの…?」
「俺は、お前の可能性を奪いたくはないんだ」
お湯は確かに温かいはずなのに、カルディアの手だけが冷たく感じられた。
その手を振り払って向き直れば、泣きそうな顔で笑うカルディアがひどく綺麗で、儚くて、有無を言わさず獣のように交わった。
(お願い、俺の気持ちを解って。)
(F;fiction=作り話)