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「で、何で朝帰りだったの」
「だーかーら、あいつが酔い潰れたんだって」
「マニゴルドとお楽しみでした、と」
「何も無かったって言ってるだろ!」
「なんにも、ね…」
週末だから、とマニゴルドに誘われて飲みに行ったのが昨日。
泥酔したあいつは足下も覚束なくなり、仕方無しに俺が自宅まで送っていく羽目になった。
そこまでは良かったのに、ベッドに沈むようにして倒れ込んだマニゴルドは何を勘違いしたのか、俺を抱きかかえたまま眠りに落ちた。
当然帰れなくなった俺はそのまま朝まであいつの腕の中に軟禁されて、解放されたと同時に帰宅したわけだ。
が、待っていたのは不機嫌さをあからさまに醸し出したレグルスで。
「嘘だと思うんなら電話してやるから本人に聞いてみろよ」
「本当のこと言うかどうかなんて分かんないでしょ」
信用無いのは俺なのか、あいつなのか。
こっちを向かない所から察するに、これは相当機嫌が悪い。
厄介なことになったな。
「……悪かった」
「なにが」
「何、って…」
朝帰りしたこと…か?
それなら俺は抵抗したし、帰りたかったのに離さなかったのはマニゴルドの方だ。何かあったわけじゃないから、事実として俺は無罪だし。
そもそも俺が謝るのもおかしな話だっていうのに、何?なんて聞かれても困る。
「浮気したこと?」
「してない」
「身体だけ?」
「何も無かったって言ってるだろ」
「……うん」
あまりにも枯れそうな声で言うものだから、後ろから抱き締めてやった。
溜め息混じりに呼んだ名前に反応は無くて、背中を向けるレグルスの表情は読めない。
「許してくれとは言わないから」
「…うん」
「今日一日、お前の好きにしていい」
――それで傷付けた分が少しでも癒されるのなら。
回した腕に手を重ねて、レグルスが小さく頷く。
じゃあ一緒にお風呂へ行こうと言われ、返事代わりにその髪にキスを落とした。
(E;Error=誤解)