君の笑顔が欲しい(志摩→燐)
『俺は、いなくならねぇよ』
そう言って、いつか君もいなくなるんでしょう?
赤い夜だった、ほんの少し足りない月が赤く照り、妙に静かで、心細い。
「お前は何が不満なんだよ」
「不満なんかあらへんえ。ただ、奥村くんもいつかは俺のこと置いて行きはるんかな、って…不安なんや」
「誰も置いてったりしねぇだろ」
「悪魔なんか、見えんかったらよかった」
「…………」
「好きで祓魔師になりたいんやないんえ。」
もう少し自由でいたかった。
坊も子猫さんも、真面目すぎるから
いつも自分ばかりが浮いて見える。
勝てるモノが何もない。
「俺は誰にも勝たらへんから」
「…勝ち負けじゃなくねぇ?」
真っ直ぐな瞳がかち合う
あぁ、君も坊と同じこと言うんやね。
「…目的見失うと歩かれへんやん?、逆に地図だけ持ってても今、自分が何処におるか分からんかったら進まらへん。そんな感じや」
「お前って、やっぱかっこわりぃな」
「はは、もう何とでも言うてくれて構へんよ」
「勝呂や子猫丸は大事じゃねぇんかよ」
小さい頃から、気がついたら一緒におって守らなあかん、って思ってきた。
大事やないわけない
友達も、家族も
強くなれん自分が悔しくて
「………大事や」
「じゃあ、守れよ」
「…俺には無理や」
「……無理だ、なんだって泣き言言う暇があんなら、強くなれよ。自分の大事なもん守れるくらいに!!!」
「………」
いつから、こんなにカッコ悪くなったんやろ。
「俺、カッコ悪いな」
「今、気付いたのか?」
「はは、かなわんわー」
せや、真っ直ぐ自分の思う通りに歩く彼らが羨ましい、眩しいって
いつからか、卑屈んなって
憧れが、嫉妬になって
「奥村くんは、やっぱりすごいなぁー」
笑顔一つで変えてしまえる
「俺な、奥村くんが好きやで」
「へ、?はぁっ?!」
へらっと笑んで、目を見つめる。
好きや、好きや
守りたいものが年々増えていく。
増える分だけ
「強ならなな」
「おぅ」
傍にあるものが増える度、守りたいものが増えていく
ほんの少し君を守れるように
[目次]