是はきっと恋なのです。
「坊は、なんでも正直に一生懸命やらはるから…」
地面に書いた、平仮名を靴底で踏みつける。
「お前がええ加減すぎんねや」
「…俺、普通やと思うんやけど」
確かに、俺は坊や子猫さんに比べたら不真面目やし
そんでも、坊の力になりたいとか守りたい、とか…そういう気持ちは嘘やあらへんし
ほんでも、坊の一番近くにおったんは俺と子猫さんやったし、それはずっと変わらんて思うてたのに、気が付いたら奥村くんが坊の隣にいはって…、なんか、なんか…凹むわぁ…。
地面に書いた、平仮名二文字
書いた小枝を放り投げて、二文字を踏む
坊の横を通り過ぎて、
風が一陣吹いたら、振り返る。
花筏なんて、風流なもんやないけど
舞ったのは、迷いなく散る桜吹雪で
坊を守る、っちゅー気持ちに迷いはあらへんけど。いつからか、自分にそこまでの能力があるなんて思えんようになって
劣等感とか、そういうんやないけど
前に進むのに、壁が現れて
乗り越えるんに必死で
「坊の背中は遠いわぁ……苦笑」
立ち止まって、振り返る余裕もあらへん
前を向くんに必死で
まったく生きるんは面倒や。
「志摩」
名前呼んでくれはるだけで、俺は嬉しいんや。
だから、坊の隣やなんて望んだらバチが当たる。
だけど、ほんのちょっと
白昼夢やと思っときたいん。
その平仮名に込めた気持ちを。
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