広い広い偉大なる航路、グランドライン。
最近は親父に挑んでくる無謀な若者達の奇襲もなく穏やかな日々を送っていた。
飯時に賑やかな食堂へ自分の髪を大切に大切にしている隊長を目的に向かう。



「サッチーサッチサッチー!」
「はいはいなんですかー?」
「あのですね、」


ハルカは目的の人物の名を大声で呼び、キッチンで何やら作業をしているサッチへ笑顔を向ける。
サッチは作業を止めて手をエプロンで拭きながら名前を呼ぶハルカの元へ近づく。


「僕、パイナップルが食べたいのですがありますか?」
「…へ?」


飯時ではなく、おやつの時間に近い今の時間帯。
暇つぶしに食堂で休憩している乗組員数名もサッチ同様ハルカをぽかんと見つめる。
こ、ここにあいつは居ないよな!とサッチは辺りを見渡すが見当たらず少しほっとする。


「や、だから久しぶりにパイナップルを」
「あ、あぁパイナップルね。なんでまたパイン?」
「んーと、エースがこっちにもちゃんとパインがあるっていうから」


あぁ、元の世界と同じ食べ物があるって聞いたから食べたくなったと。
苺とか林檎とか何でも同じものがあったし、パイナップルって何度も言葉が船内でも出てたのに今の今まで気が付かなかったのだろうか…
天然か!いや、知ってたけど改めて…天然か!


「……ごめんハルカちゃん。パイナップル切れてるわー」
「そ、う。仕方ないね。ありがとサッチ」
「あ!そういえば取って置きのがあったじゃねぇか!」
「??取って置き?」


いや、ここに何個もあるんだが…と厨房にいる若干名のコックは思った。
まぁサッチの何か企んだ顔にでも乗ったのだろう。
サッチはハルカの手を取って食堂を後にし、目的のものがある甲板へ向かった。


「お、サッチとハルカじゃねぇか!何してんだぁ?」
「エース!これからサッチにパイナップルをもらうんだー」
「え、パイナップルって食堂に…」
「エースくん!いいからお前も来い!」
「ちょ、どこ行くんだよ!」


サッチは右にハルカ、左にエースを掴んで甲板で何やら乗組員に指示をしている人物の元へ向かった。
甲板にはそれほど人はおらず、指示を受けると4人だけになる。


「よーマルコ!」
「…ガキ2人引き連れて何しに来たんだよい」
「それはだな…」


見覚えありまくりの金髪はマルコで、サッチの両手に捕まっている2人を見て眉間に皺を寄せる。
そんなマルコにこれから起こるであろう事を思うと笑みが零れるサッチ。
よくこの状況が呑み込めないハルカとエースは両者を交互に見る。


「サッチ、どこにパイナップルがあるんですか?」
「…は?」
「ハルカ!ちょっと待ってろ?」
「う、うん」
「どういうことだいサッチ」


マルコはパイナップルの発言に鋭い眼差しをサッチに向ける。
同時にハルカがサッチの腕を引き上目使いで問いかける行為にも皺を寄せる。
エースがよくわかんねぇと零し、この話にエースはあまり関わってないことが分かった。


「マルコ、もう仕事はこれで終わりか?」
「あぁ、あらかた指示したから後は部屋で書類を整理するくらいだよい」
「そうかそうか!じゃぁいいな!」
「「「???」」」


ハルカもエースもマルコもサッチの考えていることがいつも以上に分からない。
ぐい、と右手を引き、それをマルコに向ける。


「ハルカ、お望みのパイナップル、喰っていいぞ!」
「う、え、え、えええ?!」
「ど、どういうことだよサッチ!」
「そうだよい、誰がパイナップルだ」
「なあマルコ、ちょっと来い」


真っ赤に固まったハルカを離し、左に掴んでいたエースも離してマルコの肩を組む。
なぁに、こんな滅多な事ないぞ?ハルカがな、パイナップルがこの世界にもあるんなら喰いたいって言うんだ。
いつも消極的で恥ずかしがり屋のハルカにちょっと攻めさせるっていうプレイをだな。


「…お前は何をさせようとしてんだよい。死ねサッチ」
「痛い!酷い!エース助けて!」
「は?!嫌だよ!」


足蹴にすればサッチはエースの後ろに隠れて助けを乞う。
まぁいつもの事だと諦めて、首に手を当てて溜息をつく。
真っ赤だった顔を真っ青に変えてこちらの様子を窺うハルカに近づき肩に担ぐ。


「ま、マルコ!え、なに?!」
「まぁ家族からの好意をふいには出来ねぇからよい」
「ど、どういうこと?!」


降ろせと言わんばかりに、宙へ浮く両足をバタつかせながら、背中を叩く。
顔を上げればぽかんとするエースとサッチだけが居る。


「痛いから暴れるなよい」
「じゃぁ降ろしてー!」
「やだよい。サッチ!ありがたく頂いてくよい」
「お、おー!」
「エース!助けて!!」
「ハルカ、頑張れ!」
「え、エースの薄情者ー!サッチのバカー!」
「さぁハルカ、俺の部屋で思う存分パイナップル喰わせてやるよい」
「!!!」




(ま、まぁいい仕事したな俺!)
(だ、大丈夫かなハルカ…)









***
三日月主。
ほのぼのを目指したつもりがぐちゃぐちゃに。
何がしたかったのか…ごめんなさい←



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