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[53]参加希望です
by 葉月なな

「なぁ、いい加減決めよーぜ」

ため息をつきながら、皆を見渡す。
クエストを進めているうちに、段々と雨脚が強くなってきた。近くに町があった為、今夜は宿を取ることにしたのだが…

「リッドは僕と同室だ」
「いや、オレとだ」

この町には宿が少なく、辛うじて二部屋取ることができた。
そこで問題となったのは、誰と誰がペアになるかだ。
目の前では、キールとルークがにらみ合いを続けている。

「そんじゃさー、公平にくじ引きで決めない!?」

ほいっと、4本の棒をゼロスが差し出した。

「それでいいだろ?ほら、キールもルークも」

俺が促すと、渋々といった感じで二人とも棒を掴む。

「準備はいいかい?んじゃ、いくぜ〜♪せ〜の!!」

四人同時に棒を引く。
棒の先には赤と青が塗られていた。

「俺様とリッドちゃんおんなじ赤〜♪」

ゼロスは自分の棒の先を俺の唇に軽く当てると、肩を抱くように早々と俺を部屋に連れ込んだ。
抗議の声を後ろにドアを閉めると、急に静けさが広まる。


実は、ゼロスとの同室にちょっぴり構えていた。
普段から、すぐ抱きついてくるし、隙あらばキスしようと迫ってくるからだ。
ところが…部屋に入るなりゼロスはさっさとシャワーを浴び、俺が浴室から戻った頃には既に寝ていた。
…なんか、構えてたのがバカみたいだな。
冷静に考えれば、いつもの行動は 彼なりのコミュニケーションなんだろう。

布団に潜り込み、そう結論付けて眠りについた。


ふと、目が覚めた。
まだ暗いということは、寝入って数時間くらいだろうか。
寝返りをうつと、ゼロスがベッドの上で壁に凭れながら座っていた。

「まだ朝には早いよ〜」

視線だけ俺に向けて呟く。

「じゃあ、あんたは何してんの?」

体を起こし、ベッドに腰掛ける。
部屋が暗くて表情までは読み取れないが、先ほどの声の感じは、いつもと様子が違う。

もしかして、体調でも悪いのだろうか?
様子を見ようと立ち上がり、顔を覗き込んだ。

「何?キスでもしてくれんの?」

暗闇でも、ニヤリとしたことくらいはわかった。
…なんだよ、心配してやってるのに。

ふいに、いたずら心が芽生えた。
俺が、本当にキスしたら…
思いを巡らせていると、「お子ちゃまだから無理かなぁ」なんて言いながら俺の頭を撫でてきた。

子供扱いされた事に腹が立ち、俺は意を決してゼロスの頬に口づけた。
チュッと、軽い音が部屋に響く。
いそいで顔を正面に向ける。
しかし、そこにあったのは驚いた顔ではなく、いつもの、余裕すら感じられる顔。

「なーに、頬っぺちゅーくらいで勝ち誇った顔してんの?」

急に視界が変わる。
ゼロスは俺の腕を強く引き、ベッドに押し倒した。

「どうせやるなら、これくらいやれよ」

覆い被さり、鼻がぶつかりそうな距離でゼロスが囁く。
お互いの視線がぶつかったのを合図に、唇が重なった。
はじめは唇同士をふれ合わせるだけのキス…次第に角度を変え、深く、舌を絡ませ合いながらお互いを激しく求めあった。
腕をゼロスの首に回し、長い髪に指を絡ませる。

ルークとも違う赤…キールとも違う長い髪…

不意に、唇が離された。
名残惜しそうに頬を撫でる大きな手に自分のを重ね合わせる。
もっとしてほしい…目でそう訴える俺にゼロスが苦笑を漏らした。

「今日はもうおしまい。お子ちゃまはもう寝る時間だよ」

俺の額に軽くキスすると、ゼロスは元々俺が寝ていたベッドに潜り込んだ。

「なんだよ、それ…」
最後まで子供扱いを受けた事よりも、続きを期待していた自分に腹が立つ。
シーツを思いっきりまくりあげ、ゼロスに背を向ける。
ドキドキと心臓の音がうるさい。先程まで触れ合っていた唇にそっと指を当てる。思い出された快楽に体か疼く。
自分が、ゼロス相手にこんな気持ちになるなんて…
認めたくない気持ちとは対照的な体の反応。
この感情は…なに?




「よくこらえたなぁ、俺様えらい」

隣のベッドから寝息が聞こえてきたのを確認してため息を1つ溢す。
部屋に入ってから、ずっと隣室から感じている気配…おそらく、キールとルークが耳をそばたてているのだろう…ご苦労な事に未だに途絶えない。
それにしても焦った。
誘うような瞳、濡れた唇…壊れるまで抱いてしまいそうになった。
しかし、この薄い壁の向こうに可愛らしい声が届いてしまえば、まず間違いなく邪魔が入る。
人から奪うのは好きだが、必死になって守るのはプライドが許さない。
思わぬ形でやってきたチャンスだが、焦ってはいけない。
ここは大人の余裕ってやつを見せつけなくては。

そっと隣のベッドに近づく。
シーツを少し捲れば、可愛らしい寝顔。

「…ま、これくらいならOKでしょ」

勝手に自己採点しながら、リッドのベッドに潜り込み、細い体を抱き寄せる。

「愛してるよ、リッド」

暗闇に溶けた甘い囁きに、天使が小さく微笑んだ。


タイトル「これが本当のはじまり」

あとがき
おまたせいたしました(?)ルクリ→キルリときて、ゼロリです(^^)
実はリッド→ゼロスではないんですよ♪
うちのリッドは小悪魔なんです(笑)
なかなか書けないでいましたが、嬉しいお言葉をいただいたので調子にのって仕上げてしまいました♪


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[54]ご参加有難う御座います
by 管理人

葉月様こんばんは、企画への参加ご希望、誠に有難う御座います。
唐突に引っ越してみたりしちゃったりしてしまいましたが、そんな管理人の暴挙にも関わらず、変わらずにご投稿頂けてとても嬉しかったです。
以前の"ゼロリが読めるという振りですか!?"という無茶振りを覚えて下さって頂けたことに感動しました。
こうして再び葉月様の文章を拝読させて頂くことが出来て非常に有難い気持ちでいっぱいです。
(ルクリ→キルリ→ゼロリの)三部作形式は当図鑑初めてかもしれません・・!ゼロスとリッドの駆け引きがとても魅力的でした。
やり取りの情景が目に浮かぶ丁寧な描写は見習わなくてはと毎回思います。
リッドの唇をゲット(?)したゼロスの大勝利にも見えましたが、タイトル的に本当の戦いはまだまだはじまったばかりなのかな〜と色々妄想が膨らみます(笑)

ご投稿頂きました作品は図鑑の方に掲載させて頂きましたのでご確認下さい。
ではでは、もし宜しければこれに懲りずに(オイ)当企画をご贔屓にして頂ければ幸いです。
有難う御座いました!


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