Conte de fees | ナノ



02:露西亜寿司。




「マジか……」

変なメール、変な家、
まさか、ほんとに小説とかでよくあるトリップなの?

呆然とするうちを余所に、
ぱぁと明るい笑顔を咲かせる瑠華ちゃんと、
顎に手を当て考えてる風の飛鳥。


「んー、いま何時だ?」
唐突に切り出す飛鳥。

「えっ、11時少し前だよ」
「よしっ!!やるぞっ!!!」


何を、をいう前に立ち上がって一階へ駆け下りる。

「らじゃぁ!!!!」
# 瑠華#ちゃんも叫びながらあとに続く。


「えっ!!!えっ!!!!???」
大混乱なうちを大声で飛鳥が呼ぶ。


「渚砂!はやく来ないとおいてくよー」
なにがなんだかわからないが、
まぁ、飛鳥についていけばそのうちわかるだろう。

飛鳥たちを追って一階へ降りると、
すでにどこかに出かける用意をしている瑠華ちゃんと飛鳥。

どうやら家具や家電を買いに行くらしい。


「マジで、信じるの?」
「何言ってんのさ渚砂!!」
「そうだよ!トリップだよ!!」


「「楽しまなくてどうするのさっ!!!」」

きっらきらの笑顔な2人。


「あぁ、もう…何も言わないさ。っでどこいくの?」

「どこって……露西亜寿司、だよ?」


何かを企んでるような笑みを浮かべながら、
うちらの腕を引いて玄関を出る。


「飛鳥ー、場所わかるの?」
「ん?そんなの、なんとなくで行くに決まってんじゃん。」
「さすが、決断力のある方向音痴…」
「うるさい、渚砂」



♂♀




「あった、ね…」


多少の行ったり来たり、 歩くこと30分。

目の前にはあの露西亜寿司がある。
少し離れたところでは大柄な黒人が客引きをしていた。



「あれ、もしかしてサイモン?」
「やっぱり、ここ、デュラの世界なんだ……」
「夢、じゃないよね」


飛鳥と瑠華ちゃんの目が一層きらきらと輝く。

夢じゃないよ。
驚きだよ。
できれば寝たら覚める夢であってほしいよ。
ってかなんでこの2人は順応してんのさ。


「ハイ、オジョーサン。スシ、イイヨー。ウチノネタ、新鮮ヨー」


うちらに気付いたらしいサイモンが話しかけてきた。


「ほんと?私たち今日こっちに越してきたんだー」
「おにいさん、おまけしてくれる?」
「ソウイウコトナラ、オ安クシトクヨー。安心料金、オール時価ネ」
「わーい!ありがとうっ!」


なぜかとんとん拍子に話が進んでいき、露西亜寿司に入った。
瑠華ちゃん、自分の使い方知ってんなぁ…。
それを見越して、飛鳥も声かけたんだろうけど。




3人でカウンター席に座って、安めのセットを頼む。


「お嬢ちゃんたち、今日越してきたんだって?」
カウンター越しに店長が話しかけてきた。
「そうなんですよ、マスター」
「いや、マスターじゃなくない?」
「好きによんでくれ。」


店長の無表情の上に、少しだけ笑いがのっかる。

もっと怖い人かと思ってたけど、案外いい人だっ!!



「オジョーサンたち、高校生ネー?」
空いた皿を持ってサイモンが戻ってきた。
「明後日には転入する予定だよ」
瑠華ちゃんがおいしそうにお寿司を食べながら答える。


「この辺りじゃ……来神高校、か?」

「うん。らいじ……来神!!!???」



いきなり大声をあげた飛鳥。

ん?待てよ、来神……?

頭の中の?を消化している途中に肩を引き寄せられる。



「ちょ、作戦会議」
カウンターに背を向けるように小さく頭を突き合わせたうちら。
「ねぇ、来神って」
「来良になる前の名前だよね…」
「まさか、原作の時間じゃないってこと?」
「じゃぁ、今いつさ」
「来神時代・・・・・・・
「…もしかして、」
「臨也たちが高校生の時……?」


そんな、まさか。

いや、でもどこに転入するとか
今がいつだとか、詳しいことなんも
あのふざけたメールの主は言ってなかったし、ありえるか…。



「お嬢ちゃんたち、違うのか?」
「んー、たぶんそう…?」
「静雄ニ臨也ニ門田…
 来神ノ生徒、常連イッパイネー。
 ミンナイイ人ヨー」
「そっか!じゃぁ安心だね」
「学校、たのしみ!」


飛鳥も瑠華ちゃんも、とても嬉しそうだ。

店長たちには新しい環境を楽しみにしているように見えるのだろうけど、
きっとあれは好きなキャラたちの高校生時代を見れるのが楽しみなだけだ。

でも、やっぱり(サイモンのあいまいな日本語だが)
臨也やシズちゃんが高校生なのは間違いなさそう。



プレートに乗ったスシのネタももうなくなり、
3人で手を合わせごちそうさまをする。

「じゃぁ、また来ます!」
「おいしかったです!」
「ごちそうさまでしたぁ」


食欲も満たされ、お店を出る。
結局、ほんとにおまけしてくれてほぼタダで食べれた。
昼過ぎの通りは人でにぎわっている。


「いやぁ、まさか来神の時代だったとは…」
「飛鳥、なんか嬉しそうだね」
「いや、だって、高校生だよ?」
「だよねー。いいね!!」


また例のごとくテンションを上げ始める2人。
やっぱり街の景色はうちらの知っている池袋とは少し違うのがわかった。

その日は何事もなく、家具や家電を大量に買って帰宅する。


家?についたころには疲弊しきって、みんなでソファで雑魚寝?した。




あぁ、ほんとに起きたら自分の部屋にいないかな…。

別にデュラの世界がいやだとかなんかじゃなくて…
(むしろ、テンション上がる)
めんどくさいことになりそうだから、いやなんだ。



でもきっと、この夢は早々に覚めそうにもないや。残念。