short | ナノ



From "I" to "You" ver.2014




あなたに愛を。





「ユーーウっ!!!」


もう、夜の更けている時間。

教団内に明るい声が響く。

いわゆる恋仲にある俺と飛鳥だが
互いに任務が重なり、
久しく声すら聞いていなかった。

うす暗い廊下をその少女は
自分に向って走ってくる。


「……っ!!!」

勢いよくつっこんでくる飛鳥を受け止める。
俺の首には細い腕がまわり、
飛鳥の香りがいっぱいに広がった。


「…あぶねーだろ。
 ってか、医務室行けよ。
 ケガしてんじゃねーか」

腕や頬など、体中いたるところに、
軽いものだがケガが目立つ。

少し汚れた団服…飛鳥も任務帰りなのだろう。




「ううん。いいの。
 今日は、ユウに一番に会いたかった…。
 よかった、間に合って…」




「…ユウ……」


俺の名を呼ぶ飛鳥の声が耳元で震える。

その胸に抱かれ、視界が真っ暗になった。

飛鳥と俺の体温が同調していくのがわかる。




「ユウ、私ね。…ユウが大好き。」

「は?お前、いきなり…「いいから聞いて」





「私を見つけてくれたのはユウだった」


「あそこから連れ出してくれたのも、ユウ。

 ここへ連れてきてくれたのも、
 家族をくれたのもユウ。


 生きる意味を教えてくれたのも、
 大好きだって気持ちも
 守りたいって気持ちも
 
 大切なモノ、全部ユウがくれた。



 こんな最低な世界な世界の中でも、
 ユウがいるから、

 いま、わたし、…すっごく、幸せなんだ」





「ユウ、大好きだよ。愛してる」







世界に光が戻る。

飛鳥の頬を伝うしずくが月明かりに反射した。




こつんと、額がぶつかる。

飛鳥の呼吸のひとつまでが感じられるキョリ。





「HappyBirthday,…Yu」







From " I " to " You "
(生まれてきてくれて、ありがとう。)



愛をくれて、ありがとう。









会えない日々がひたすらに。
気付いたらもう、
彼とは出会って10年目…。
長いようで短い日々ですが、
やっぱり"待つ"時間は長いです。
また、彼に会える日を待ち望んで。

2014.06.06