short | ナノ



あなたが生まれた日。




6月5日。

明日は彼の18の誕生日。





朝、目が覚める。
朝、といってもまだ朝日は昇ってない早い時間帯。


見慣れない天井。

(そっか…任務中だっけ……)


ゆっくりと体を起こし、そのまま朝の支度をする。


コンコンッ

と控え目なノック。

ドアを開けると仏頂面の愛しい彼。


「おはよう、ユウ。今日も朝から仏頂面ね」
「うるせぇ。支度できてんなら行くぞ」
「は〜い」

急いで、日本の着物を模した団服にイノセンスである刀を差し
彼の後を追う。

たぶん昨日仕入れたイノセンスの奇怪現象の発生地だろう。


昇り始めた朝日は彼の黒髪をキレイに染めて。









真夜中、月の光が射す頃。


「飛鳥!そっちだ」
「わかった!!!ユウ、後ろ!!!」

ザシュッ

イヤな音をあげながらアクマが壊れていく。
100近くはいたアクマ達は残すところあと5体にまで減った。
でも、もうすでにファインダーはこの戦いに巻き込まれていない。
イノセンスを持ってんのはユウ。
必然的にユウの方がアクマが寄ってくる。


3、

バンッ

2、

ザシュっ

1、

「アクマごときにイノセンスは渡さねぇよ」

最後の1体をしとめる。


急に辺り一面が静かになる。
雲があんまりなくて、月や星がきれいに見える。
血まみれなのと、足を怪我したのを抜きにすればすごくいい夜。

ってかユウにばれないうちに足、手当てしなきゃ。
たぶん引きずったりしてないし、血も返り血と交ざって分かんないと思うけど……


ちょっと顔をしかめたユウが私の手を引っ張って近場の岩に座らせる。


「飛鳥、そこ座れ」
「へ?」

ユウが怪我してる所にそっと触れる。
つい、顔をしかめる。

「っっ!」
「やっぱり、お前怪我してんじゃねぇか」
「だ、大丈夫だよ。そこまで酷くないし」
「んっなわけねぇだろ。酷くなかったらお前は顔しかめたりなんかしねぇし」
「………」
「図星だろ?見せてみろ」

そう言ってズボンのすそを少し捲くる。
以外と深い。アクマの爪で酷く抉られたような。


「てめぇはバカか。なにこんな痕が残りそうな傷作ってんだよ」
「しょうがないじゃん。できちゃったものは」

ユウが自分のシャツとキレイに破り、傷口に巻きつけていく。



「まぁ、もし痕が残っても俺が引き取ってやるがな」

傷口を縛りながらボソッと呟く。

「え?」

最後にキュッと結び、スッとこちらを見据えてくる。


「飛鳥」

静かに私の名前を。口ずさむかのように。


「この戦争が終わったら、」


ユウが自分の首から下げてある鎖をはずす。
彼の手には銀色の指輪。

「俺と一緒に来ないか?」


静かに時は流れていく。
ユウの言った言葉が理解できるまで数秒かかった。

『俺と一緒に来ないか?』ってことは、
…………プロポーズ……?


返答に少し時間がかかる。


「わた、しなんかで、い、いの…?」

「あぁ。駄目だったら言わねぇだろ。"お前が"いいんだ」


二人のかげがゆっくり重なる。

今朝とは違う光が二人の黒髪をキレイに染めて。






「ユウ。Happy、Birthday!!!!」





祝福のように午前0時の鐘が鳴る。



あなたが生まれた日。
左手、薬指の微かな重み







初めての誕生日夢。
神田くん、お誕生日おめでとう!!!
2010.06.06