感情論 | ナノ



05.友と呼べるひと




まだ冬のなごりで、

冷たい風が吹き抜ける。

灯りのない暗い外。

北極星に背を向るようにベンチに座っている。

 

ここ、屋上庭園にいるのは

 

私一人。

 

 

見上げる空には、星があふれている。

流星群、見えるかなぁ。

 

ふと、思い浮かべるのは

今朝の出来事。

思わず歯向かってしまった。

あの人のことが嫌いなわけではない。

ヒトとしてはいい人だと思う。

ただ、教師としての側面が嫌いだ。

建前だけで、全てを語る。

それが自分自身の考えであり、
全ての人間の思考であると疑わない。

そこが嫌い。

キレイなことしかしらないで生きてきたんだって思う。

そして何より、

本当に、恋とか愛とか、知らないのはあの人の方。

臆する心を建前でくるんでる。




まぁ、愛とか恋とか嫌いなところでは

きっと私と似た者同士だろうけど。

 

段々と思考が落ち込んでいく。

星を眺めていたはずの目が

涙でぬれてるわけでもないのに、

焦点が合わなくなってくる。

メガネを通した視界がゆがんでいく。

あぁ、これだからメガネはいやだ。
 

 

 

「なにやってんだよ、こんなとこで」

「一人になるな、とあれほど言っているでしょう?」


突然背後から声が降りかかる。

そのまま後ろへ見上げると

あきれ顔の同級生ふたり。

 


「あれ、颯斗にタカじゃん。どーしたの?」

「どーしたの?、じゃありません」

全く…と、ため息をもらしながら飛鳥の両隣りに腰を下ろす。

「お前がこの時間でもケータイにでないし、
 部屋の無線にもでねぇから…」

「あっ…気付かなかった」

ケータイをひらいてみると、

タカと颯斗からそれぞれ2回の着信。

 

「で?どーしたの?」

こんだけ電話があったのだから、

なにか用件があったに違いない。

 

そしたら、なぜか意味深に2人が顔を見合す。

「飛鳥、お前…直ちゃんになに言った?」

直ちゃん…

陽日直獅せんせい………

タカがそれをこの場で口にするってことは、

もう颯斗も承知の上、か……。

 

「何って……ゲーム、吹っ掛けただけだよ?」

険しい顔の2人から目をそらすように

天上へもう一度視線を戻す。

 

「ゲーム……とは?」

颯斗の声色が怖い…。

だけど、

大切な友達だから

隠し事もしたくないし、嘘も嫌だ。

 

「惚れたら負けの、ゲーム…?」

「「っっ!! …………………」」

あ〜ぁ……

空に雲が戻ってきちゃった…。

 

「それで……陽日先生は…」

「その話乗ったって」

「そのゲーム……お前にとって危ないものじゃないんだな?」

「大丈夫だよ。ただの暇つぶしだし」

そういう飛鳥は、薄く笑う。

これ以上は、なにも追及できない雰囲気。

一層、冷たくなった風が辺りを吹き抜ける。

 



「帰りましょうか」

ひどくやわらかな声の青空。

その言葉に他の2人も立ち上がる。

そのまま、寮への道をまっすぐすすむ。

 

「あっ、そういえば飛鳥」

「なに?」

「今朝の誤解は解いておいたぞ」

「…………話し、た…?」

「んっなわけねぇだろ。…怪我してたとだけ言っておいた」

「そっか。ありがと、タカ」

 



職員寮兼女子寮のまえで足を止める。


「じゃぁ、おやすみなさい飛鳥」

「おやすみ、颯斗。タカ。
 なんかいろいろ迷惑かけてゴメンね」

「別に、気にするなって」

「そうですよ。まだまだ冷えるのでお気をつけて」

「うん。…じゃぁ、おやすみ」

そのまま自寮へ戻っていく2人の影を見送る。

 

 

 

05.友と呼べるひと
(大切、なんです。)

 

 

 

 

飛鳥さんの姿はもう見えなくなった。

「飛鳥、大丈夫でしょうか…」

「わかんねぇ…。
 でも、俺たちは、俺たちができることをしてくしかねぇだろ」

「そう、ですね…」

頭上には、また春の星座が踊りだしていた。

 

あぁ、どうか。

大切なあなたが、壊れてしまいませんように。

 

 




111204
主人公側です。
直獅に吹っ掛けた
根本的な理由はまたいつか。
.........でてこれる、かなぁ、、、。
結局のところ、
琥太郎先生も神話科も、
どっちかっていうと主人公の味方。