感情論 | ナノ



03.無知と黙秘




朝とは逆の方角から陽がさしこむ、生徒指導室。

軽いノックと共に、犬飼が入ってきた。



「失礼しまーす」

「まぁ、座れ」



向かい合わせに置かれたパイプ椅子に腰掛ける。

こんな風に真面目に向き合ったのは初めてか……。
メガネの奥から真意が読み取れない。



「直ちゃん、あのあと飛鳥なに話した?」

席につくなり、いきなりそんな質問。

神田から何も聞いてないのか?

朝以来、神田にあってなく、
唐突に話がきられたままなので
俺だって何もわからない。




「、、、、、、何も」



「じゃぁ、俺からも何も話すことは無いなぁ」


強張っていた表情からふっと力が抜ける。


「どういうことだ?」

「俺からじゃ何も話せないってことですよ」



俺からは、じゃなくて俺からじゃ…。

一体神田に何があるって言うんだよっ………。



「まぁ、ひとつ弁解するなら
 あそこにいたのは飛鳥の怪我の手当のためって…」

「あいつ、怪我してたのか!!?」


全然気付かなかった、、。


「保健室に行くくらいには。
 俺、消毒液もってたじゃん」

あの時、犬飼の手から落ちたのはそれだったのか。


「でも、何であんな薄暗く……」

「いくら幼馴染みだって見られたくはないでしょ」

俺の一言をあっさり切ってくる。
予想とは大きく外れた展開に頭がついていかない。



「…夜久がいるじゃないか」

「あんな朝早くに呼び出すんですか?
 それに、夜久にだって言えないことはあるんっすよ」


確かに神田と夜久が一緒にいるところはあまり見ないが、

そこまで仲が悪くもないだろう。

ましてや学園にたった2人の女生徒。

幼馴染とはいえ、男の犬飼より話しやすいことも多いだろうに。

その夜久にすらいえないこと…?



「まぁ、詳しく知りたいんだったら
 星月先生に聞くのが一番いいっすよ」



琥太郎、先生………?

なんでいきなり琥太郎先生なんだ…?



「俺たちが朝あそこにいれたのも星月先生の計らいだし。
 じゃっ、俺は部活行くんで」


静かに席を立つ。

白鳥と騒いでるか、青空に怒られている犬飼しか知らない。

こんな、静かにまっすぐな目をするやつだなんて知らない。



ドアノブに手をかけたところで、
何かを思い出したように振り返る。




「直ちゃん。飛鳥になに言われたかわからんけど、

 飛鳥傷つけたら、俺も颯斗も黙ってないから」




バタンっと小さな音を立てて扉が閉まる。



犬飼が残していった

最後の言葉が離れない。





03.無知と黙秘







111103
やっと更新できた……
書きたいのに全然かけない
このもどかしさを何とかしたい。

犬飼くんの口調が分かりません。
直獅のキャラが分かりません。
琥太郎先生、巻き込んですみませんっ!