はろ、はぴ | ナノ



17.れっつ、さぷらいず。



「ぬーーっ!!!」



夏休みになってめっきり人が減った。

まだ夏の大会にむけた運動部の掛け声は聞こえるが、
図書館からも遠いこの校舎には誰もいない。

が、しかし。
廊下の端からすこし独特な叫び声が聞こえた。



「ぬ?」

「ぬぬぬ……」


薄く光が漏れているのは生徒会室。
のぞいてみると人影がひとつ。



「……翼?」

畳の上でうなだれている翼だった。



「どーしたの?」

「ぬぬ……ぬ?飛鳥?」

「うん。めずらしいね、翼がこんなになってるなんて」


「ぬー、…?飛鳥は帰らなかったのか?」

「私は毎年かえらないんだ。翼は?」

「俺は終わったら帰るのだー!!」


嬉しそうにその場で両手を上げる。
おばあちゃんのことが大好きなのがよくわかる。


「何が終わってないの?課題?」

「ぬー…ぬっ!!!」

何かを思いついたように勢い良く起き上がる。



「飛鳥も一緒につくるのだっ!」



そう言った翼は、わたしの腕をとってラボへと引きずる。

ラボには大量の紙や工具が散らばっていた。

とりあえず、わけがわからないが
わけのわからないことをやらされそうになってることはわかった。



「何かつくってるの?」


「そらそらのプレゼントなのだっ!」

「颯斗の?……誕生日?」

「そうなのだ。…あっと驚かせたいのだが……」



ぬぬ…とまた悩みはじめた翼。



「よし!そういうことなら私にも手伝わせて!!」

「ほんとか!!」
「私も颯斗にはたくさんお世話になってるしね」


そういうと翼が散らばってた紙をかき集めて見せてくれた。



「ここがこーなって、でも上手くいかなくて…」
「こっちのはできそうじゃん。
設計は大丈夫だと思うから…あとは材料だな…」

「ぬぬぬ…あっ!確かあっちに…」
「ナイス翼っ!それがあるならここは…」


夢のつまった設計メモたち。
翼の才能の豊かさを実感させられる。



「飛鳥はすごいな!!」



きらきらと目を輝かせるその姿はまるでわんこ。



「翼の方こそすごいよ。さぁ!もっとつめてこっ!!」


「ぬいぬいさぁ!!!」







17.れっつ、さぷらいず。






さぁ、あの涼しい笑顔を崩してみせようぞ!

颯斗の誕生日まで、あと一月半。




140606






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