先代護挺十三隊、十二番隊隊長。
及び技術開発局創設者であり初代局長、浦原喜助。
尸魂界を追放され、現在は現世で浦原商店を開き、影で尸魂界と繋がっている。
そんな一筋縄が通用しない相手に恋い焦がれている1人の死神が、今日も現世に降り立っていた―――
「ゆず乃さん、また来たんですかぁ〜?」
喜助の呆れた態度を気にも留めず、ゆず乃は頬を染める。
「だって、丁度良く虚が出て出動命令が出たんだものっ」
ゆず乃は、喜助の姿を見るだけで幸せを感じる。
全く相手にされていないのだが、諦めずに仕事のついでに甲斐甲斐しく通っているのだ。
いや、喜助に会うついでに虚を倒していると言った方が正しい。
「あのねぇ、ゆず乃さん。何度も、何っ度も言いましたけど…。こうやってアタシと関わっていることがバレたら、ゆず乃さんは処罰を受けるんですよ?」
「本当に何度も聞いたわよ。しつこいわねっ。私はそれでも良いの!」
ゆず乃の言葉に、喜助は溜め息を吐く。
これ以上、言い合いを続ければゆず乃の最終手段とも言える一言が出るからだ。
『どうして…? どうして私も…私も一緒に連れて行ってくれなかったの…っ』
ある雨の日、喜助が現世にいることを知ったゆず乃は浦原商店に来た。
ずぶ濡れで、捨て猫のような顔をしながら泣いて震える元部下に、喜助は掛ける言葉が見つからずただ抱き締めるしかなかった。
そう、きっとそれが間違っていたのだ。
それからゆず乃は、ことある毎に浦原商店を訪れた。
「分かりましたから…今日はもう帰って下さいね♪」
そう笑顔で言ってピシャリと戸を閉めた喜助を、ゆず乃は頬を膨らませながらも嬉しそうに見て、尸魂界へ帰って行ったのだった。
「次は、いつ虚が出てくれるかなぁ〜」
「次は、いつ来るんでしょうか…」
2人は、それぞれ違う思いで溜め息を吐くのだった。