紫陽花 Ajisai      彩光 5

中庭で、死神副隊長3人が顔を向き合わせて座っている。
修平、乱菊、恋次の3人だ。
その顔は険しい。
顔を向き合わせていながらも、誰も口を開かない。
その重い空気に、通り過ぎる隊士達は見ないように気を使っている。
恋次と乱菊は、一部始終を修平に話し終わったところだった。


「馬鹿か、あいつ…」


修平が苦虫を噛み砕いたような表情で呟いた。
誰も反論はしない。
修平が心の中では心配で堪らないと思っていることが分かっているからだ。
乱菊は深く溜め息を吐くと口を開く。


「何とか…ならないのかしら」
「ならねぇだろ! もう決定しちまったんだ」


乱菊の言葉に恋次は怒鳴る。
恋次も、そのことは自分でも何度も考えていた。
しかし、決定を覆すことなど出来た試しがないのだ。


「せめて…最後に浦原さんに会わせてやりたい」
「………」


修平と恋次は、その言葉には否定も肯定もしない。
複雑な気持ちで一杯だった。
乱菊は女として、ゆず乃の気持ちを汲み浦原に会わせてやりたいと願う。
それと反対に、修平と恋次は男として浦原には会わせたくなかった。
男と女の考え方は、時にはすれ違うものだ。
3人の間には、再び沈黙が訪れた。
少しの沈黙。
その沈黙を破ったのは修平だった。


「でもよー…。俺、浦原さんの気持ち分かるんだよな」


突然の驚く意見に乱菊は驚き、修平を睨む。
そして、恋次も何か言ってやれとばかりに視線を送る。
が、怒っているだろうと思った恋次は神妙な顔をして黙っている。
乱菊は訝しげに見ると、溜め息を吐いた。


「もしかして、恋次もそう思う訳?」


乱菊の問いかけに、恋次は頷いた。
ちゃんと説明するように、乱菊な促す。


「何でって…男ってのはそーゆうもんなんだよ」
「だな。浦原さんの行動は、恐らく全部ゆず乃の幸せを願っての行動だと思うぜ」


男2人は揃って、自分だったら同じ事をするかもしれない。と言った。
乱菊は、男という生き物の変なプライドの高さと不可解な考え方に、心底うんざりする。
結局、その考えは女の為になっているのだろうか?
ゆず乃の為になったと言えるのだろうか?
乱菊は次第に腹が立ってくる。


「あー…! もうっ、イライラするわ! ストレスはお肌の天敵なのに」


そう言って頭を抱える乱菊に、男2人は複雑な表情で考え込んだ。
そして、何を考えたのか決意した様子で口を開く。


「おい、これ以上は俺達は踏み込めねぇよ。後は、なるようにしかならねぇ」
「そーいうことだ。じゃ、俺はもう行くぜ」


恋次と修平は、よっと掛け声をつけて立ち上がる。
唖然とする乱菊に背を向けて歩き出した。
訳が分からないのは乱菊で。
その場に呆気に取られて立ち尽くしていた。




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