紫陽花 Ajisai    萌葱の葉 6

十二番隊、実験室。
今日もまた爆発音が聞こえる。
それと同時に、ガラスの割れる音、ゆず乃の悲鳴、閉ざされた扉からは複雑な色の煙が漏れている。
隊士達は、またか…と苦笑する。
ゆず乃は実験の内容を隠している。
そして、実験していることも隠しているつもりのようだが、全く隠しきれていなかった。


「あーっ! もうっ…また失敗」


黒い顔、少し焦げた髪の毛。
ゆず乃は、うんざりと溜め息を吐く。
浦原に、いろいろと教えてもらってはいるものの、内容を隠している為に聞けないこともあった。
だが、元々は1人で全て完成させる予定だった中、浦原の出現は幸運だった。


「……頑張ろう…」


ゆず乃は散らかった部屋を片付け始める。
一体、いつ完成するのだろう。と見えない先に目眩がする。
しかし諦めるつもりは微塵もなく、逆に忙しく楽しいこの充実した時間が続いても良いとも思っている。
この実験は、自分を試す為のもの。
何かが欠けている心を埋める為に、『これ』を作ろうと決めた。
完成して、自分がどう変わるか分からない。
完成させて、余計に心に隙間を感じてしまうかもしれない。
でも今の、何かが足りない、孤独を感じてしまうゆず乃には、何かに打ち込んで紛らわすしか無かった。


「これ…かな?」


そーっと、液体をビーカーに混ぜていく。
緑色と黄色の液体が混ざり合って、青になっていく。
その様子は、とても綺麗で思わず目を取られる。
すると、液体は何故か茶色に変化していく。


「………」


次の瞬間、ビーカーは破裂し煙が湧き出した。
ゆず乃は間近で目の中に煙が入り、痛みでうずくまった。


「し…しみる〜…!」


涙が滲み出る。
目を擦りながら、今まで集めた沢山の資料を手に取る。
何度も失敗しながらも、少しずつではあるが進んでいる。
熱意があると、こうも違うのかとゆず乃は苦笑した。

ゆず乃の予想では、後1年もかからない。
良くて後数ヶ月だろう、と考える。
全て、浦原の助言のお陰だった。

ふと、資料に今挑戦した実験と似た事例を発見する。
それを元に、今の状況と照らし合わせ失敗の原因を突き止めるべく紙に書き留めていく。
出来上がった後、この実験の内容や経過が記された資料は全てマユリの元へ渡される。
その為にも、丁寧に細かいことも書いて置かなくてはならなかった。

マユリは時々、様子を聞いてくるが部屋へ入って来ようとも内容を聞き出そうともしない。
興味がないのかもしれない。
第一、実力も熱意も格段上であるマユリならば、もっと早くに、もっと簡単に完成させるかもしれないのだ。


「本当、神様は不公平よね」


自分に才能がないことを人のせいにして、ゆず乃は溜め息を吐く。
そして、分からない場所を発見し自分の手に負えないことを悟ると、今日もまた浦原の元へ行くことを決めるのだった。




戻る/次へ進む



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -