「ウソップ誕生日おめでとう!」

「ぎゃあああああ!」


甲板に小気味良く響く破裂音にウソップは予想以上の反応を見せてくれた。新しい武器の開発に熱中する彼の耳元でクラッカーの紐を引いただけなのに、十年寿命が縮まったと大袈裟に怒るウソップを何とか宥めて早速本題に移る。


「何か欲しいものとかある?」

「ん?あー、すぐには思い付かねーな」

「もっと死に物狂いで考えてよ」

「おいおいプレゼントってのは相手に内緒で用意するもんだろ?」

「…だってどんなに考えても腐った卵しか思い付かなかったんだもん」

「お前こそもっと死に物狂いで考えろよ!」


 相変わらず面白い顔でツッコミを入れてくれるウソップが好きだ。そして何だかんだ真剣に欲しいものを考えてくれるウソップも好きだ。そんな風に勝手に微笑ましく彼を眺めていれば、顎に手を宛てて暫く考え込んでいた彼がわかった!と顔を上げた。


「次の島で一緒に買い物行って、俺が気に入ったモンあったら買ってくれよ」

「おー、珍しく名案!」

「珍しくは余計だ」


 そう得意がるウソップの横に座り、再び作業を始めようとする彼に慌てて声をかける。


「でももし、欲しい物が無かったら?」

「そしたらまた次の島で探すとか」

「そこでもなかったら?」

「おれよりネガティブだなお前!そうしたらまた次の島だ、次の!」

「そっか、じゃあ…ずっと見つからなきゃいいね」

「いや、今までのやりとり何だったんだよ!」


 ズビシッ!肩にキレのいいツッコミを入れられた。
 

「だってさ、見つからなければ次もまたウソップとデート出来るんでしょ?」

「……は?」


 おれはこう見えて忙しいんだとかなんとか言ってるところを遮って言葉を挟めば、一瞬固まった彼は錆びついたロボットのようにギギギと不自然にこっちを向いた。


「ウソップ?」

「うおわああ!?ちちち近ェよバカ!」

「どもり過ぎ。変なウソップ」

「うっせ!つか、何だよ!その発言はどういうアレだ!」

「どういうって?」

「だから、その、何だ…お前は俺の事が、す、す、す…」

「うん、大好き」

「!」


 ドンガラガッシャーンって、まさにそんな感じ。
 ひっちゃかめっちゃかになった道具や部品の真ん中でウソップは何か言いたげに口をパクパクさせている。耳まで真っ赤にしちゃってさ。可愛いったらないよね、ほんと。それでいていざっていう時にはちゃんと頼りになっちゃうんだから困る。


「なーんちゃって」

「嘘かよ!」




(本当は嘘じゃないよ)
(もう騙されねェからな)
(じゃあもう騙されてるよ)




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