「イゾウ隊長!今日も見目麗しくいらっしゃいますね!素敵です!」

「ありがとよ」

「隊長と並べばどんなに美しい花であろうときっと花の方が霞んでしまうに違いありません!」

「あぁ、そうだろうな。で、今日は何が目的だ?」



 煙菅からゆらゆらと立ち上る煙越しに笑い掛けてやれば、ナナは待ってましたと言わんばかりの笑顔を浮かべる。まったく、分かりきった下手な世辞なんか並べねェで最初から用件を言やぁいいのに。


「実はわたし、バナ…マルコ隊長からある宿題を出されていまして」

「宿題?」

「コレなんですけど…」



 そう言ってナナが見せたのは升目の引かれた一枚の紙切れ。升目以外には何も書かれていないそれに首を傾げるとナナはポツリポツリと説明を始めた。

 その説明によれば先日停泊した島でのこと。バナ…いや、マルコの使いで街へ出掛けたナナは頼まれた品物が見つからず街の真ん中で困り果てていたらしい。そこへ親切な少年がやってきて彼の案内で無事に目的の品物を手に入れることが出来た。しかし少年はここでナナが帰ることを許さず、案内した礼に少し付き合って欲しいとナナを飯屋に誘った。確かに借りがある手前お人好しなコイツは断る事も出来ず、誘われるがままにそいつに付いて行った。
 そして帰りが遅かった理由をマルコに問われ、正直に話した結果怒り出したマルコにこの紙を突き付けられたという事らしい。



「つまり反省文を書けってことかい?」

「そういう事です」

「そして、それを俺に手伝えと」

「わたし文章を書くのってどうにも苦手で」



 えへへと笑うナナはなるほど、文章を書くのが苦手そうな顔だ。下手したら文字を書けるのかすら怪しい。



「ソレ書くより楽にマルコに許して貰える方法があるぞ」

「えっ!?」

「教えてやろうか」

「ぜぜぜ是非!」



 ちょいと手招きすれば期待に満ちた笑顔で耳を寄せてくる。素直と言うか単純というか。なかなか可愛いヤツではある。少し屈んでひそひそと耳打ちしてやるとナナは大きく開いた目を数回瞬かせた。



「それだけでいいんですか?」

「あぁ、お前ならな」

「でも…」

「善は急げ、だろ。それともおれの言う事が信じられねェっていうのかい?」

「! いえ、そんなことは…わたし、行ってきます!ありがとうございました!」



 勢い余ったのか紙を握り潰しこの場を走り去っていく小さな後ろ姿に、おれは込み上げる笑いを堪えきれなかった。
 そして数十分後、予想通りに分厚い紙の束を持って泣きながら走ってくるナナの姿にはこっちも涙を流す程笑わせてもらった。




ぶおもちゃ
ほんと、飽きが来ないねェ




「イゾウ隊長の言う通り゛にじだのに…怒ら゛れまじだ…!ぐすっ」

「まぁ、そうだろうな」

「ええ!?」





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