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「いいかい? アンタらはエサだ。余計なことせず、言われたとーりに、ポイントまでターゲットをしーっかり引っ張ってくるんだよ! もし足引っ張るようなマネしたら、そのお綺麗な頭蓋に風穴開いちまうかもねぇ!」
「結構な意気込みですけど、はずさないでくださいよ」
「はあ? 誰に言ってんだい!? よっぽど三途川を拝みたいようだね、あのジジイより先に殺ってやろうか!?」
「その短気ですぐカッとなるところ、スナイパーに一番向いていない性格ですよ」
「じゃああんたは400ヤード先の動く脳みそぶちぬけるってのかい!?」

 今回の任務は、バーボン、キャンティ、コードネームなしの男と俺。なんとも不安を掻き立てられる面子である。
 組織の用意したバンの中、仲間とは思えないような空気が漂う。あたふたしている運転手の男が可哀そうだ。

「お、落ち着いてくださいよ、キャンティさん……」
「キャンティさんだって!? 馴れ馴れしく呼ぶんじゃないよ!」
「……そろそろ時間だ、行くぞ」

 放っておいたら撃ち合いが始まりかねないので、適当なところで間に入って止めるとバーボンを連れて車から降り、キャンティたちと別れて指定されたホテルへと向かう。
 17階にあるホール入口で受付を済ませ、無事入場出来たところでバーボンがため息をつく。

「キャンティのあの姦しさはなんとかならないんですかね。いつもいつも、げんなりする」
『なんだって! ちょっとライ、そいつを窓際に連れてきな!』
「……キャンティに聞こえているぞ」
「聞こえるように言ってるんですよ」

 招待客に配られるコサージュをスーツの胸ポケットに差し、二人で人の流れに合わせて歩く。
 バーボンの髪色と髪型ではコードが目立ってしまうということで、インカムをつけているのは俺だけ。集音はそこそこ性能のいいものを使っているため、俺の周囲の会話は全てキャンティ達に聞こえるようになっているのだが、必然的にその”姦しい”キャンティの声は俺の耳にしか届かない。理不尽だ。

「女性は気が強いくらいがいいものだ。気に富み情熱的なのは魅力のうちだろう」
『……アンタみたいなのタイプじゃないけど、下手な世辞も言えないようなバーボンよりマシだね!』

 こんなどうでもいいことで撃たれちゃたまらない。
 そう思ってフォローするのだが、それを聞いたバーボンが露骨に顔を顰める。

「あなた、あんなのが趣味なんですか。同じ男として神経疑いますよ」

 命の恩人になんてこと言うんだお前は。俺の彼女は黒髪の大和撫子だぞ。


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