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 コナン君今日は友達と皆でバイキングだって。
 俺も快斗くんを連れて行ってあげたいところだが、彼にはもう本国に帰ると伝えてしまったので残念ながらそれはできない。他に誘う相手もいないぼっちなのであった。

 水無怜奈返品騒動も収束し、若干足を引っ張りつつ事後処理や撤収の段取りを決めている最中、コナン君からホテルで起きた殺人事件にてたまたま居合わせたキャメルが容疑者になってしまったと連絡が来て、ジョディはもーキャメルったらーなどと慌てて迎えに行ってしまった。仲良くなったようでなによりだ。しかしキャメルは何をやってるんだ。そのホテルハッテン場なの?
 一段落ついてもジョディはなかなか帰ってこなかったので、いずれにせよコナン君が彼女の気を引いてくれる手筈だったものの、ちょうどいいからジェイムズに話があるといい、二人で缶コーヒー片手にワゴンの後部座席へ乗り込んだ。
 キャメルの死んだふりはすぐにドッキリ大成功する予定だったからいいが、俺は下手すると一生、最悪ガチで死んでしまうかもしれないので、一応ジェイムズだけには話を通しておきたいとコナン君に了承を得たのである。

 ちょっと俺死んできますわから始まり、これまでのあらすじとこれからのあらすじをみゃんこlogyに説明すると、ジェイムズは難しい顔で頷いた。

「……なるほど、それであの男を一人で処理したのかね」
「はい」
「あの少年には驚かされてばかりだな」

 成功したところで高飛びするんならまだしも、この先も彼らと同様、あの子が引っ越しでもしない限り米花町にいるつもりなのだ。
 コナン君の携帯に指紋ついてるアピールはできたはずで、彼からも捜査官の手に渡るようにしてくれるらしいが、それひとつで納得するかはちょっと掛けになる。一応拠点は既に移動を行っていて新しい方には行ってないし、以前の拠点は念のためと言って自分でも拭き取った後業者の清掃などを入れていて、病院の設備等にも極力触れていないが、徹底的に探されたら漏れのある箇所や物品が出てくるかもしれない。
 事故の処理を単独で行ってゆうしゃの遺体を引き渡していないのもかなり疑わしくなるだろう。GUNMAでもないのに人ひとりの体が消えているのだ。
 それにどう頑張っても金無しに行動するのは不可能だ。口座を凍結されると非常に困る。不慮の事件事故で死んだ人間が直前に預貯金を移動しているというのもおかしな話だからできない。銃器なども一般人のふりしながら日本で保持し手に入れるのは難しい。

 その他諸々、バックアップもなしに正式に死亡の手続きを取られると身動き取れなくなる上、本部やジェイムズが本気で追求したら隠し通すのは難しいのである。状況によってはまずいバレ方をしそうだ。
 俺がもう少し富と権力を持ってれば良かったんだけどな、夢ありったけかき集めるような生き方はしていなかった。

「ほとんど戦力にはならなくなりますが……」
「まあ、何も言わず死なれるより遥かにマシだ。おそらくそれを利用できる場面も出てくる。いいだろう」

 面倒なこと丸投げしてゴメンネと謝ると、ジェイムズはため息をついたものの、肩をすくめてやれやれとおどけて許してくれた。そういうところ好きだよ。
 座席を動かすのがめんどうで横並びに座ったのだがだいぶシュールな絵面だなこれ。滑らないように気をつけて持ちつつコーヒーを一口煽った。

「……私が潜入捜査中にプログラムを頼んだ男を知っていますか」
「ああ、日本人の……公安の彼かね」
「あの女が彼の動向や所在を把握している可能性があります」
「……いつ知ったことだ?」
「一年前に」
「…………そういうことか。時期的にもう一人いたろう。それで見逃したのかね」
「はい」
「何かしら措置を講じておこう」
「ありがとうございます――申し訳ありません。不誠実でした」
「まったくだ。それについてはしっかり反省するように」

 ついでにジョディ君と何かあったろうと聞かれて、年甲斐もなく逆ギレしたことを白状すると、ものすごーく微妙な顔をされた。はっきり怒られるか呆れられたほうがまだ良かった。

「ジョディを頼みます」
「言われずとも、大事な部下だ。安心してくれて構わんよ」

 きみは時々馬鹿だな、と言われる。むしろ馬鹿じゃないときがあるのか。

「……いい機会だ。すこし休みなさい」

 ぽんぽんと肩を叩かれた。あまりスキンシップ過多な人じゃないので何となく変な感じがする。

「もちろん必要な際にはしっかり働いてもらうがね」

 ジェイムズは穏やかに笑うと少し雰囲気を緩ませ、ややからかうようにそういえば、と切り出す。
 きみ、あの男に接触したろう、クラッカーの。彼は昔情報提供者だったんだがね、えらく頭が切れるがいたずら精神が旺盛で、本部にいる私の友人――彼とはCISPESのテロ容疑捜査で少しだけ一緒に仕事をしたことがあってね、それ以来ちょくちょく連絡を取っては酒を飲んだりする仲なんだ――も手を焼いているんだ。所在が知れて助かったと言っていたよ。そう、私が若い頃はFBIにコンピューターなどあまりなくて、情報を収集するのにも分析するのにも一苦労だった。最近じゃあパラボラ集音マイクなんてめったに使わないだろう――
 それからジェイムズの話はシカゴのマフィアやロンドンでの生活、有名な探偵小説、世界的大泥棒一味の女性についてなど、軽快な調子であれやこれやと枝葉を伸ばしていく。
 それなりに面白いのでちょこちょこ合いの手入れつつうんうんと大人しく聞いていたら、彼の体はいつの間にかそばに寄り、その腕が俺の肩に回っていた。
 慰撫に似た声色と相まって、包むようなそれがなんだかちょっぴりくすぐったい。
 ――父親みたいだな、と思った瞬間、なぜか手元からコーヒーの缶がすっぽ抜けて床に転がってしまった。ほとんど飲んでしまっていたから中身が飛び出ることはなかったのが幸いだ。

「大丈夫かね?」
「……ええ」

 そして車内に電子音が鳴り響く。


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