「ねえ、ダンテ様」


大人しく俺の隣でごろごろしていた名無しが不意に俺の名前を呼んだ。どうした、と問えば少し間をあけてから返ってきたのは


「……ちょっとぐらい、構ってほしいなあって」



なんて、珍しく素直な台詞。
明日の六聖人会議のための書類から目を離すことなく「貴様は構ってちゃんか」と呟くけば「……ダンテ様限定です」と、なんとも可愛らしい答えが返ってきたもんだから、俺は書類を脇に置いて名無しの望み通り構ってやることにした。ベッドの上に寝そべって、巷で流行っているらしいキングフレアエッグ型のぬいぐるみと戯れていた名無しの隣に腰を降ろすと、名無しは、ぬいぐるみを離してすぐさま俺の腰に手をまわした。ふわりと甘い匂いが鼻孔を擽ってなんとも言えない気分になってしまったのは、まあ、言わないでおく。好き、と呟いた名無しは照れ隠しなのか俺の腰にぐいぐいと頭を押し付けてきた。腰に回った手にも一層の力がこもっている。


「大好きです」

「そんなこと、今さら言われなくても、分かっている」

「……ダンテ様は?」


名無しがそう言って笑ったから、俺は返事の代わりにぐいっと頭を引き寄せてその唇を奪ってやった。戸惑いながらも絡まる舌。ん、と溜息混じりに零れた声が妙に色っぽい。ちゅ、ぴちゃ。と響く水音を聞いてその気になってしまった俺はゆっくり名無しを押し倒した。幾度となく繰り返した行為だが未だに慣れないのだろう。名無しは顔を真っ赤に染めて不安げに俺を見つめた。好き。大好き。震える声で言葉を紡ぐ名無しが愛おしくて、俺はまた、言葉の代わりにキスを贈った。




たまに不安になっちゃうことがある
(そう呟いた彼女に俺は)(不安になったら、言え。俺はいつでも名無しの傍にいる。そう微笑んでもう一度キスをした)

 





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