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このダークゾーン支部に戻られた江西さんは前と明らかに雰囲気が変わっており、正直どう対応したらいいかわからない事が最近多いと言うが最近の私の目下の悩みだ。
別に悩む必要がないとは思う。それでも、明らかに前と違う江西さんと自分の中にあった江西さんのイメージがどうもうまく合致しないせいなのかどこかぎこちなくなってしまうのだ。
そして今日もまた。江西さんのデスクに置かれている袋に包まれているパンが二つ。
前までこんな人間味のある行動など彼がしている事などあまりなかった。
食べてるのかすら心配していたぐらいだと言うのに人間とは変わるものだなぁと勝手に関心してしまう。

「江西さん、もしかしてお昼ですか?」
「ああ。それはコロッケパンだ」
「ころっけぱん」

普通に尋ねてみたものの、ごく普通に帰ってきた言葉に若干違和感を感じる。思わずおうむ返しにぼやいてしまった。
江西さんがコロッケパンって。俗物的な言葉を何故か言うだけで何とも言い難い複雑さを感じてしまうのは失礼かもしれないが今までのイメージとどうしても噛みあわない。

「U-20で組んでいたチームメイト達に教えてもらったものなのだが」
「ああ、なるほど」

そういえばかつてのトライスリーであった安城トコハとその友人である岡崎クミの二人とこの前組んでその事に出ていたのを思い出せば確かに納得がいく。
なんとも不思議なチームだったが、うまくやっていたと言うのだからチーム内の関係は良好だったようで何よりだと微笑ましく思いながら小さく笑みを浮かべた。

「それ以来、ふとした時に食べたいと思うようになってな」
「…意外ですね、江西さん食とかにあまりこだわりを持ってなさそうだと思っていたので」
「ああ、俺も自分でそう思う。ちなみにもう一つは望月、君にだ」

ごく自然に差し出されたコロッケパンが包まれた袋に一瞬戸惑いながら受け取る。
ほんのりとまだ暖かく出来立てなのだろう。まさか江西さんから何かを頂けるとは思っていなかったのでまたもや失礼だと思いながら驚きのあまり尋ねた。

「え、あ…何故私の分まで?」

私の質問に思いもよらなかったのか、瞳をぱちくりとさせて何か思案するような表情を一瞬してから彼は口を開く。

「何故だろうな、君にも食べてもらいたいと思ったでは答えになるだろうか?」
「…いえ…ありがたく。頂きます」
「ああ」

少し困ったように首を傾げる江西さんは卑怯だ。
そんな言い方されたら、心が高鳴らないわけないだろうとコロッケパンに齧りつきながら視線を泳がせる。
口に広がっていくパンとコロッケの味は確かに美味しくて、確かにハマるのも納得がいくなぁと一生懸命に江西さんの言葉を深く考えないようにと必死に思考をずらす。
が、そんな必死の足掻きも気づかない江西さんは私の顔色を見て再び口を開いた。

「暑いのか?」
「もごっ…いえ、そんなことはないですけど…?」
「頬が赤いが」
「っ、大丈夫です、何もないですよ。あとコロッケパン、すごくおいしいですね」

思わず不意に指摘されたことで逆に気恥ずかしくなってしまい、思わず動揺を隠せないまま感想を述べる。
一瞬不思議そうな顔をしたものの、そうだろうと頷き彼もまたコロッケパンに口元へと運んだ。
彼のその感情を理解することはあるのだろうか。むしろ落されてしまったこの心をどうすればいいのか。
コロッケパンの味がわからなくなるほどただ咀嚼するだけだった。



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