Crash!

がたん、と大き目な音がして千影の視点が一変した。
何がどうなってこうなったのかはさっぱりわからないがどうやら転倒したらしい。
そんな千影の目の前には櫂の顔。つまり櫂が仰向けで倒れており千影がその上にかぶさってしまっている状態だ。

「いった、…ってごめん」
「…望月。いいから、退け」
「はいはーい、今退きますよっと」

櫂の足の間から抜け出す千影のスカートの裾から見えるふとももに櫂は思わず目を奪われた。
どうやら今日は素足だったらしくやけにそれが目立っているような気がして視線が外せずにいる。
当の本人はその視線に気づいていないらしく、なんとか櫂の足を抜けだして立ち上がると手を差し出していた。

「櫂?」
「っ、あ、ああ」

千影が不思議そうに首を傾げると櫂はどこか視線を泳がせながらその手を取った。
…今はスカートが下りて見えないそのふとももに、なんともいえない感情を抱きながら櫂トシキは溜息をつくしかなかった。

「今度からは周りをちゃんと見ろ…」
「う。ごめんなさい。つい、買ったパック見てて全然足元見てなかったんだよね。
 ていうかむしろ櫂は怪我ない?大丈夫?」
「ああ。背中を打ったぐらいで別になんともない」

心配そうに覗きこむ千影に、自分で背についたであろう埃を払いながら櫂は事も無げに言葉を返す。
痛みは引いており、今は問題はない。

「ご、ごめん。明日痛くなったらほんとごめん。お詫びにシップ張ってあげるから…!」
「いらん。それよりお前の方は平気なのか」
「うん?うん。今の所は大丈夫。それに櫂がクッション替わりになってくれたし!」

何度目かの謝罪と謎のお詫びに櫂は首を横に振り、千影の様子を眺める。見える所に怪我はないようだが。
自身の体をきょろきょろと見渡しながら千影はなんともないと頷いた。

「それとあまり短いのはやめておけ」
「ん?」
「…見えるぞ」

櫂の言葉に何の事か理解できなかった千影は目を瞬かせて何事かと思案する。
気づかない千影に追い打ちをかけるように櫂が言葉を重ねれば瞳が大きく見開かれた。

「…え?…は、え!?見えたの!?え、何その反応!!セーフ?セーフだよね!?ねえ!?」

何も言わない櫂に千影はその腕を揺すって必死に尋ねる。
実際見えてはいないし、それよりも素肌のふともものほうが目に焼き付いたなどとは言えない。
それに思った以上に千影の反応がおもしろいので櫂はそのまま何も口を開かなかった。

「か、櫂の様子的にセーフだもんね?そうだよね、うん…」

もはや千影は自分で言い聞かせている横で櫂はふ、と小さく笑みを浮かべるのだった。


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