気がついたらどうしようもなく好きだった。最初は驚いたし悩みもしたけど、今は悩むより先に柳さんのことを考えていたいぐらいで、自分でもどうしてこんなに好きなのかわからない。
とても抑えられるような感情じゃなかった。でも俺が結局抑えるみたいな形になっているのはたぶん、今までの人生の中で学んできた常識と、まわりの先輩の目と、いつもちょっと忙しすぎるおかげだと思う。それにこのままでいるのも悪くないと思っていた。忙しい毎日の中には必ず柳さんがいたし、俺が辛い時も苦しい時も柳さんの隣にいられるなら、嬉しかった。



1、幸村と柳

「赤也はどう?」
「どう、とはどういうことだ」
「仲良くやってる?」
「それなりにな」
「そっけないんだね」
「そっけないも何も、互いに普通に練習をしているだけなんだが」

そう言って蓮二はノートを開いた。

「ほら、ここを見れば分かると思うが赤也は冷静さに欠けていて試合中盤から…」
「あーいや、そういうことじゃなくてテニス以外の、もっとこう…人と人との交わりっていうかさ」

そういう意味での赤也との関係は、どうなの。聞くと、蓮二は困ったように笑って俺を見つめた。

「お前と赤也の関係と大差ないと思うが」
「それじゃ困るんだよ」

だってお前たちはパートナーだろ。言ってみると、また蓮二はさっきと同じように笑った。

「それはそうだが、パートナーだからと言って赤也を特別扱いするつもりはない」
「それ、赤也に言ったら傷つくんじゃないかなあ」
「言うなよ?」

蓮二はノートをぱらぱらとめくりながら釘をさした。分かってるよ。でも蓮二、どうして赤也専用のノートばかり何冊も持ち歩いてるの。



2、真田と赤也

「赤也、蓮二はどうだ」
「え、どうって…いい先輩っスけど、なんなんスか、急に」
「うまくやっているか」
「はあ…」

赤也は何故か俯いた。やはり何か蓮二に思うところがあるのだろうか。今まではさして気にしたこともなかったが、俺は蓮二と赤也の相性がどうなのかがよく分からない。ここ数日特にそれが気になっていた。仲が悪いようには見えないが、目立って良い様子もなく、場合が場合ならペアを変えなければならない。

「蓮二とやっているのは窮屈か?」
「いや…窮屈っつーか、なんか、胸が苦しいみたいな…」
「そ、そんなに苦痛か?」
「あ、いやいや、胸が苦しいのもそうなんスけど、楽しい方が勝ってて…」
「…?」
「辛いけど、ずっと一緒にやってたいなって、思うっス」
「…そうか」

では蓮二とダブルスを組んでいるのは楽しいのだな、と重ねて確認すると、赤也は良い返事をした。胸が苦しいというのには多少不安が残ったが、本人がいいと思うのなら俺がどうこう言う義理もない。それこそ蓮二に相談すればと思ったが、赤也は再び俯いて言葉を濁した。気のせいであればいいのだが。



3、柳と赤也

「…赤也、赤也、聞いているのか」
「え、あ、はい!」
「…今日はもう帰れ」
「ま、待ってくださいよ!」

ちょっとぼーっとしてたくらいで、それも他でもない柳さんのことを考えてぼーっとしていたのに、そのせいで愛想を尽かされるのは嫌だった。嫌われたくない。俺はただその一心で柳さんの隣にいた。隣に居れば居るほど嫌われる確率も高くなると分かっていても、そんな損得を考えるより先に柳さんの隣にいたかった。

「もう俺の話を聞く気力はないんだろう」
「いや、ありますあります!続き言ってください!」
「もういい。……そんなに寂しい顔をするな」

寂しい顔をしたつもりなんてなかった。でも柳さんにそう見えたならしょうがない。俺は意味もなくほっぺたをごしごしこすって下を向いた。

「俺の話は退屈か?」
「ち、がいます」
「俺の話を聞きたいか?」
「聞きたいっス」
「もう寂しい顔はしないな?」
「はい」
「俺のことが好きか?」
「…え、」

俺が返事をできずにいると、柳さんは「データ通りだな」と言って俺がさっきこすったほっぺたを撫でた。その指先は熱くもなくて冷たくもなくて、俺は、まさに柳さんの体温そのものがほっぺたから全身に広がっていくようなぞくぞくした感覚にただただ痺れていた。









赤也の片想いかと思いきや実は両思いな柳(→)←赤を見守る立海R軍orレギュラーの誰か


みやみさん、リクエストありがとうございました。ご希望通り、とまではいかなくても、多少心に留めていただけるようなものになっていれば幸いです。



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