「部活サボってわざわざ俺のところに来るなんてどういう了見だよ」
「あー、いや、その、」
「今日練習しなかったせいで丸井は一試合落とすんだよバカ野郎」
「ば、…バカはねーだろい」

幸村君はもう一回、ばかだよと首を振ってから俺に中に入るように言った。

「幸村くん、あのさ、」
「何」
「…やっぱなんでもない」

幸村君は、はあ、とため息をついて俺を見た。真っ白な病室の真っ白なベッドの上で真っ白な服を着てる幸村君の顔はやっぱり真っ白だ。俺の顔をじっと覗き込んで真剣な目をする。居心地が悪くなって下を向くけど、幸村君は「こっち見ろ」と言って俺の顔をつかんだ。目だけあさってに向けた俺はじりじりにらんでくる幸村君を見れない。俺は幸村君のことはもちろん好きだけど、こうやって覗き込まれるのは嫌いだった。俺が考えてることを全部見られてるみたいな感じがして、怖いから。俺がいつも抱えてる不安や心配を知られたら、きっと幸村君を悲しませるから。

俺は正直理解できなかった。クリスマスだってのに幸村君がこんな寂しい病室で俺なんかと二人でいることが。俺たちは、つまりテニス部の連中はクリスマスにも幸村君に会いに行くつもりだったけど、幸村君はそれを先に断った。

「クリスマスだから、なんて言ってる場合じゃない。練習しろ練習」

それをまた素直にバカ正直に受け入れた真田は、今日も一日練習に励めとか言った。…まあ、本当のところは幸村君が気になってしょうがない感じだった。来なくていいと言ったのは幸村君だし、練習しなきゃいけないっていうのも一応正論だ。真田を責めるつもりはない。
だからといって俺が納得できるはずもなくて、ケーキだって昨日夜中に耐え切れず自信作を作った。我ながらうまい。これは早く食わねーとまずくなるよな。だから俺は、平手打ち覚悟で練習をサボってここまで来た。とまあ、俺の言い訳はここで終わり。

「幸村君、…メリークリスマス」
「これ、俺に?」
「天才的にうまいから食って」
「ありがとう」
「…うん」
「丸井はなんでそんなにクリスマスが大切なの」
「クリスマスじゃなくて、幸村君が、……」

無意識に身を乗り出して熱くなってた俺はしばらく何も言えなかった。

「いただきます」







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