今日は久しぶりに早く帰ることが出来たが、もう日はとうに落ちていて結局いつもと同じく遅く帰ったような気がした。部屋は当然暗かったが、それ以前に何故か殺風景だった。俺は幸村が帰ってくるまでに済ませてしまおうと思い洗濯を始めたが、しかし洗濯機の蓋を閉めてボタンを押せば俺の仕事らしい仕事は終わってしまう。これといって何かをやった、という手応えはない。
まだ幸村から連絡はなかった。いつものように遅くならないといいと思うが、それは今日たまたま早く帰ることの出来た俺の身勝手というものだ。少し待って連絡がないようなら先に夕食を済ませてしまおうと決めると、携帯に着信があった。幸村からだ。

「真田、今どこ?」
「家だが」
「なんだ、もう帰ってたのか」
「今日は運が良くてな」
「夕飯は?」
「まだだ。早く帰ってこい」
「じゃあ今日はごちそうだよ」
「…どういうことだ」

見れば分かる、と言って幸村は一方的に電話を切った。これではいつ帰るのかも分からないままだ。しかしもうすぐ帰ってくるだろうというのは察することができたので、俺は米を研いで炊飯器の電源を入れた。








家に着くとまず、うちの炊飯器が唸っている音が聞こえた。靴を脱ぎながらただいまと言うと真田もこっちを見ておかえりと言う。俺は空腹を直に訴えてくるような真田の顔によく見えるようにケンタの袋を掲げてみせた。

「それがごちそうとやらか」
「昨日はフライドチキンの日なんだってさ」
「昨日?」
「昨日はもう店が閉まってたから」
「それで今日か」

たいしたごちそうでもないのに真田は素直に喜んでくれたみたいで嬉しかった。意味もなく自転車を飛ばした帰り道にはやっぱり、意味があったみたいだ。

まだ早い時間に落ち着いて一緒に夕飯を食べるのは久しぶりだった。俺は真田が炊いた少し固めのご飯をよく噛みながら、規則正しい咀嚼を続ける真田の顔をまじまじと見つめた。

「なんだ、何かあったのか」
「…昨日はフライドチキンの日だけど、今日は何の日か知ってる?」
「いや」
「11月22日はいい夫婦の日だって」

真田は少し戸惑ったように手を止めて苦笑した。俺をたしなめるような声で言う。

「それを俺に言うのか」
「ああ、いつも世話になってる俺の大切な旦那さんにね」
「…お前は嫁か?」
「な訳ないだろ」

あからさまに目を逸らして少しだけ笑っている真田はきっと、俺と同じ幸せを感じてくれていると思う。俺は箸を置いてチキンを取り、おもいきって大きく食らい付いた。


















11月21日(フライドチキンの日)からの11月22日(いい夫婦の日)ネタ







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