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珍しいこともあるものだ。
万事屋には滅多に、いや、初めてだろうか、とにかくよほどの事がなければ姿を現さない男が居間のソファーにちょこんと座っている。

「人の色恋やらプライベートにまで口を挟むのは、あまり性には合わないのですが…」

真選組監察山崎退。
隊服姿でなく、アンダーにハイネックの黒い服を着こむ独特の私服姿を見るに、どうやら非番にわざわざ足を運んできたらしい。
その正面には銀髪の家主、坂田銀時が座っている。

「ですが最近は目に余るといいますか、顔色も悪くなる一方だし食欲も落ちてます。まぁこちらは慢性的な睡眠不足による食欲不振でしょうから、ゆっくり休んでもらえれば問題はないわけです。昨日なんかは立ちくらみを起こしてました」

「へぇ、誰が」

「とぼけないでください。副長が、ですよ。たまの早いあがりも外に連れ出されちゃ休む時間もありませんよ。すぎたことを言うつもりはありませんがね、夜に連れ出すのも少々控えてもらえませんか」

「あいつそんなに夜遊びしてんのか」

「夜遊びって…あのねぇ旦那、あの人は自分を省みる人じゃないんですから。そこら辺も旦那に気にしてもらわないと。一昨日の晩だって…」

「ところでジミーくん」

ムッと眉を寄せた山崎を、銀時の間延びした声が遮る。
酷くだるそうにソファーにもたれていた体を起こして、鼻をほじった収穫物を指の先でこねた。

「俺さぁ、今日二週間ぶりに会うんだよね。土方に」

「・・・・え?」

山崎の垂れ下がる小さな目がわずかに見開かれた。
今、この人はなんと言ったのか。
伸ばされた人差し指を腕に擦り付けられたがそれを咎めることもできずに冷や汗だけがツウと頬を流れる。

「え?」

わけもなく、また母音が1つ口をつく。
だって、今、なんて言った?
会っていない?
2週間ぶりに会うといったのか?

「うそ…ですよね…?」

「んー」

凡庸とした様子に寒気にも似た恐怖がかけ上る。

(本当なんだ…)

まっすぐにこちらを見るその表情に感情の変化は見えないが、恐らく、いや、絶対に、今、自分は地雷を踏んだ。
いやいやいやだって副長が夜に会う相手なんて旦那以外はあり得ないと思ってたから、ここは絶対信じて疑わなかったんだもん!
山崎は心中言い訳をたて並べるがそれはもう後の祭りだ。
目の前の男に、いらぬ情報を与えてしまった。

「で、あいつ夜によく出掛けてんだ」

「え、あ、あの…」

「そこら辺の話、詳しく聞かせてもらおうか」

蛇が獲物を睨み付けるような、頭からすっぽりと食われてしまうかのごとき迫力。
―――――ああ、すいません副長。
山崎退。
一生の不覚。

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