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稲実の野球部で エースナンバー背負ってて
甲子園にも出たことがあって それなりにモテる
でも決まった相手はいなくて わがままで
実はまじめで 優しくて 笑顔が可愛くて

ぜんぶぜんぶ君のこと

はじめは興味なんて全然なくて
あの子が君のことを話してるのを聞いてるだけで
2年のくせに野球部のすごいやつくらいにしか思ってなくて
同じクラスなのに気にしたこともなかった

けど、君のことを聞くたびに
どんな人なんだろうって
だんだん存在が大きくなった

好きな人ができたんだって

そんな話も聞いた

きっと有名な君だから
綺麗なあの子が好きなんだろうな
もっと早く気付いていたら
話すくらいはできたのかな

そしてまた私の中の君は大きくなる

君が視界に捉えるのは私じゃなくて
私の隣のあの子
いいんだ 君が笑ってるだけで
それが私に向いてなくても

この気持ちはぎゅっとしまっておこう

はじまる前におわる私の恋

「名前、 ねー!ずっと呼んでんだけど!」
「え、私?なんで」

「なんでって…なんでだろう、
…いーじゃん!クラスメイトに挨拶するくらい!」

「あ…うん、おはよ」
「おはよ!」

見つめるだけで良かった 君が 近い

「成宮…くん」
「鳴!で!良い!」

君 が 鳴くん になる

「鳴…くん、あのね」
「ん?」

しまったはずの疼きが出てきそう

「やっぱなんでもない」
「えーなんで!気になるじゃん!」

あのね

「なんでもないってば…」
「ね!俺知ってたよ、見てたよ!名前のこと!」

「え…あ…え?」
「顔真っ赤!もしかして俺のこと好きだった?」

子どもみたいにはしゃいで 私の顔を覗き込んで
冗談だよ、ってはにかむ君の笑顔が眩しくて
評判通りの俺様っぷりが可愛くて
きゅんと心臓がうずいた

図星だよ ずっと見てたよ 君のこと

あのね、好きだよ、鳴のこと

はじまれ 私の恋