「何でいるの栄純」 今日、年末年始の長期オフだから東京からこっちに帰省してくる、栄純から連絡が来たのは一週間前だった。中学を卒業してから東京の方へ行ってしまった栄純と会うのは、年に数回しかない。夏の大会の予選を何度か見に行った時を会ったが、それ以来初めて会うことになる。若菜達には一緒に駅まで迎えに行こうと誘われたが、あたしは、その輪には入らなかった。入れなかった。栄純とは小さい時から仲が良かったし、家も近かったから、お互いの家を行き来していたりもしたが、あたしは一緒に野球をしていないし、マネージャーでもなかった。中学の時も試合の応援にはこっそり行ったりしたが、応援に行くって言ってなかったから、来るなら連絡よこせよって怒られた記憶がある。皆には栄純との野球の記憶があるのに、あたしにはない。だから、あの輪にはどうしても入っていけなかったのだ。こっちに帰ってきてる間は栄純もゆっくりしたいだろうし、あたしからは会いに行かない、そう思い連絡もしてなかったのに。友達と遊んで、そういえば今日は流星群が見える日なんだっけ、そう、楽しみにながら家に帰ってくると、なぜかあたしの部屋には栄純本人がいたのだ。 「お前が連絡よこさねえし、迎えにも来ねえから」 「野球部の皆といっぱい話すかと思って」 「…それはそうだけど、俺はお前とも話すことあるぞ」 そう言う彼を見て、くすりと笑ってしまった。お帰り、と言うと彼はただいまと言った。 「来るんだってら連絡してよ」 「連絡したら、ちゃんと会ってくれるのか」 その言葉に、喉が詰まる。確かに、連絡を貰っても必ず会ったという確証はないから。 「お前だけあん時泣いてなかったから」 「…あの時?」 「俺がこっち出るとき」 栄純が言う、あの時、確かにあたしは泣いていない。正確には泣いてはいけないと思ったから。 「あたし野球一緒にしてないもん」 「はぁ?」 「でも、あの子達は、してる」 「…お前、淋しくねぇの」 「淋しい、よ」 でも、と続けようとすると栄純に頭を撫でられた。あたしより遥かに大きくて、でもごつごつはしてなくて、綺麗な手。 「してないけど、お前は俺の側にずっといたじゃねぇか」 応援してくれたじゃねぇか。栄純はポツリと呟いた。 「だから、我慢して欲しくない」 そう、彼に言われて、我慢していたものが全て溢れ出てきたように、一筋、床に落ちたのだ。 「えい、じゅん」 淋しいよ、遠いよ、もっと一緒にいたいよ、喉につっかえていた言葉が、淡々と出てくる。それを栄純はうん、うん、と聞いてくれるのだ。 「でも、やっぱり一番は、栄純の頑張ってるところが好きだから」 いつかまた、一緒にいられたらいいな、そう零すと、約束する、と彼は笑顔で言ったのだ。 「あ、」 「…どうしたんだよ」 「そういえばね、今日流星群見えるんだって」 「へぇ、見てみるか」 カーテンを開け、窓も開ける。外を見渡して見たが、星がきらきらしてるのしかあまり分からなかった。 「あれ、見えないのかな」 「俺にはさっぱり分かんねえ」 でも、やっぱこっちの空、むこうより断然綺麗なんだな、そう言い、笑う彼の横顔に、熱が集まった。 きらきら星 でもやっぱり、一番輝いてるのは隣にいる栄純だと思った |