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今日は久しぶりに丸1日オフ。
彼女にどこに行きたい?と聞けば水族館っと返って来た。

目の前で行われているイルカのショーに手を叩いてはしゃいでいる彼女の姿。
俺はイルカなんかよりその姿を見る方がよっぽど楽しい。と舐めるように彼女、名前を見ていた。

『きゃー!すごーい!』

今日は朝から本当に楽しそうな名前。
名前は今まで何も言わなかったけれど、もっとこういうところに来たかったのかもしれない。
文句も言わず、今まで我慢してきた献身的な自分の彼女に惚れ直す。

「イルカとふれあい体験に参加されるお客様はイルカプールへお越しください。」

館内のアナウンスでいつの間にか終わっていたショーに気付いた。
名前の希望でそのふれあい体験に申し込んでいた俺たちは指示された場所へ移動した。

『かわいーーー!』

イルカを優しく手で撫でながら喜ぶ名前。
写真とって!と手渡されたカメラのシャッターをきる。

なにこれ、めっちゃかわいいじゃん。

映し出された画面の中、満面の笑みでイルカに寄り添う名前。
今まで見てきた彼女の姿の中で1、2位を争うような可愛さだった。

「この画像、俺に送って。」

『いいけど、なんで?』

「待ち受けにする。」

『えー。絶対それ倉持に馬鹿にされるよー。』

俺も、そう思う。でも、この笑顔をずっと見ていたい、そう思ったんだ。
だから誰かに何か言われようが構わない。天秤にかけた結果、そうなった。

ついに彼女の写真を待ち受けにしちゃう惚気馬鹿男になってしまったか、俺。
ニヤニヤ考えていると名前に手をひかれた。
連れてこられたのはこの水族館の売りである超大型水槽の前。
カラフルな魚や、大きなサメ、優雅に泳ぐウミガメやエイ。全てが盛り込まれた水槽はまるで海の中そのものだった。

「これは、すげーな。」

『こんなに大きいと、どっちが水槽の中かわかんないね!』

魚か、私たちか、と無邪気に笑う名前。
そんな可愛い事言っちゃう彼女が俺に問う。

『ねぇ、もし私も一也も魚で、お互い違う水槽の中だったらどうする?』

名前はたまにこういう小学生みたいな質問をしてくる。それも結構本気で。
だから俺もいつも本気で答えてやる。

「自分の水槽出て、干物になっても名前のとこに行く。」

『なにそれー、おいしそー』

と、微笑む名前。水槽から漏れる青い光が名前を照らして、まるで本当に水の中にいるようだった。
目の前にあるその笑顔が流れていってしまわないようにそっと両手で名前の頬を包む。

今日はずっと笑ってるなー。名前もだけど俺自身も。
笑いすぎて頬の筋肉が痛いくらい。

あー幸せ。

「ほんと、同じ水槽でよかったよ。」