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「うわ、冷た」

彼氏である、御幸一也の家に行って最初に言われた言葉がこれ。
私は玄関で口を尖らせ、一也を振り払い、部屋の中にズカズカと入っていく。一也はそれを見てクスクスと笑い、後ろからついてくる。

冬になるといつもこれだ。
きっと彼は久しぶりに会えたから嬉しいのだろう。玄関で抱きついてくる。で、冒頭の言葉が出てくる。
もうこれで何回目なのだろう。一也は私が拗ねることをわかっていて毎度毎度やっているのだろうか。

「怒ってる?」

『寒い』

「なー、聞いてる?」

『寒い』

「…ハイハイ、お風呂いれてきますよーっと」

寒いと連呼すれば、一也はため息をついてお風呂場に向かった。

『……』

私はカバンを椅子の上において、マフラーを外し、そしてソファに向かう。そのままテレビのリモコンでテレビを付けて、一也がお風呂をいれ終わるのを待つ。

今日は面白そうなテレビはやってないなぁ。

ポチポチとリモコンでチャンネルを変えていると、

『………っ!?!?』

「はっはっはっ」

『か、かずか、かずや!』

一也の冷たい手で、首を触られた。心臓が口から飛び出るかと思った。

『な、なにすんのよ!』

「俺の手冷たい?」

『あ、当たり前でしょ!?』

「はっはっはっ、名前と一緒だな」

そういってソファに座り、私の手を握る一也。冷たい

『……冷たいんだけど』

「はっはっはっ、そりゃそうだろうな」

『…』

「風呂一緒にはいる?」

『嫌』

「せめてダメって言ってほしい…」

『無理』

「聞いてる?」

私の手を握っていた手はいつのまにか腰を掴んでいて、ゆっくりゆっくりと抱き寄せられる。そしてそのまま一也の足の上へ。すると、自然と胡座をかいている一也の足の間にスッポリとハマる。

「なーなー、まだ怒ってる?」

『…』

私の肩に顔を置く一也。
…一也は毎度毎度わかっていてやっているのだろうか。

「どーやったら機嫌治る?」

『……さぁね』

「んー…じゃ、ラブラブしよ」

一也は毎度毎度わかっていてやっているに違いない。
お風呂が溜まったのだろうそれを知らせる音が聞こえるが、私は無視して一也の唇から伝わる熱を感じていた。