あの上司ホントにムカつく。いらない書類をシュレッダーにかけながら、あの色黒金髪の顔を思い浮かべる。

「降谷さんの部下になってからずっとイライラしっぱなしだよな。ういちゃん」
「だよなー。あの人の奔放さの被害を直に受けるのが部下だしな」

後ろからそんな声が聞こえる。本当にその通り、イライラしっぱなしだ。昔、友達が事件に会ってその関係で警察の仕事を知り私も立派に日本を守りたいと思い、高校卒業とともに、警察学校に行きそこを卒業とともに運良くも悪くも公安に行けたはいいが……。こうなるはずじゃなかった。

時は2年前。公安の降谷零さんが組織に潜入をしているとは聞いていた。その話を聞いて私もそんな風に活躍できたらと憧れを抱いていた。でもそんな捜査は私にとっては数年後。いや、何10年も先の話だと思ってた。公安といっても20のひょっこりと配属されたペーペーの仕事は、雑務と来客対応といったほとんど一般事務。たまに見学程度に先輩について回る日々だった。頑張って働いていたおかげで、周りとの関係はとても良かったし仕事にはとても満足してた。

入って数ヶ月。今日はあの降谷零さんが一旦顔を出すと言われていた。写真で顔は見たことはあるがなかなかカッコイイ顔をしていたなとそんな事を思いながら、この日も私はシュレッダーに書類をかけていた。少し周りが騒がしくなるのを感じ、社内を見渡すと降谷さんが帰ってきていた。……お茶出しいるかなとシュレッダーにかける書類の残りを見ながら、そんなことをぼんやりと考えていた。すると降谷さんと話していた1人がこちらを指差して降谷さんが歩いてきた。挨拶しないと。

「私、数ヶ月前からここに配属になりました。上杉ういです。まだ何もわからない新人ですが精一杯頑張っています」
「活躍は聞いてるよ。だいぶ頭の回転が早くてみんな助かっているみたいだよ。ところで事件などに関わった件数は?」
「まだ先輩方の後ろをついて回る程度で……」
「関わってみたい?」

あの時いいえと言えたらどれだけ良かったか。それに組織を潰すため最前線で動く憧れの先輩の質問の答えにいいえと答える新人がどこにいるだろうか。今考えるとハメられたな。当たり前の様にはいと答え、私はその日から降谷さんの直属の部下になった。いざ蓋を開けてみたら、自由奔放に組織と公安を行ったり来たりする降谷さんに、連絡をつけたりだとか降谷さんがしなくてはいけない事務仕事を押し付けられ、今から組織に見つからないよう現場に来いだのとにかくほぼパシリだ。確かに現場力とかもついてきたし、同期で学校を卒業した人たちには、負けない自信はついた。同期に今何してるの? と聞かれ降谷さんの名前を出すといいなと言われる。変わってあげる。本当に。

「今何か失礼なことを考えていなかった?」

降谷さんに会った時のことを漠然と思い出していると降谷さんが後ろに立っていた。この人今日ここにいないはずなんだけど。

「2年前と変わらず降谷さんは唐突な言動が多いなって思ってました。決して今日は組織の仕事で別の県に行くと昨日言い忘れてたとか言って連絡があったばかりなのになぜ今ここにいるんだ、この野郎などと思ったりはしていませんよ」
「今日は中止になってヒマだったから寄ってみたんだ」
「なら、そこに溜まってる書類片付けてください。私、自分の書類片付けたいので」

明らかに面倒くさそうな顔をする降谷さん。私より仕事出来るんだからあれくらいすぐ片付くでしょうよ。しかし何を思ったのか保護をしている女の子の為に家に帰ると言い出し、事務所を出ていこうとする。私はシュレッダーの電源を切り慌てて、降谷さんの腕を掴んでとめる。

「彼女は今日学校なんじゃないんですか? 面倒臭いのはわかりますけどせめて! せめて! 上の3枚だけ片付けてください! 今日の午後までに提出なんです! 降谷さんの判が必要なんです!」

降谷さんの都合で上がってこない書類に頭を下げるのは誰だと思ってるんだ! 降谷さんの場合、事情が事情なので1週間の猶予はもらえるが、それだって私に同情した事務長が仕方なくくれたものなんだぞ!

「お願いです。頼みます」

冗談です、上3枚片付けたら帰りますとデスクに戻る降谷さん。さて、ここでもう少し機嫌をとって半分くらい片付けてもらうにはどうしたらいいか私は考えるのである。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -