……覚悟しろよ。そう言われて早1ヶ月。特に降谷さんと恋人同士になって、私が大学生になった事以外変わったことは何も無い。そう何も無さ過ぎて不安なのだ。覚悟しろよって言われた割にはあれ以来キスも何も無い。確かに3年一緒に暮らしてたし、劇的に大きく変わることなんて何も無いけど、少しくらい恋人同士の甘い雰囲気になってもいいんじゃないのかな? って思ってしまう訳で。

私の思いなんか知らずに、ダラダラとした空気の中いつもの様に、お酒を飲みながらテレビを見ている降谷さん。なんとなくいつもより近くに座って見ても反応は全く無し。視線を送ってジッと見ていると、その視線に耐えられなくなったのか視線はテレビに向けられたまま何? と聞かれた。何と聞かれても困ってしまう。キスしたいとかそんなの言えるわけがないし何より恥ずかしい。

「別に何もないですよ」
「そうあまり見られてると何だか落ち着かないから」

ごめんさないと自然と声が小さくなってしまう。私も視線をテレビに合わせる。でもテレビの内容なんか全然頭に入って来なくて。またチラチラと降谷さんに視線を向けてしまって、降谷さんと視線が合う。

「さっきから落ち着かないみたいだけど、どうした?」
「何でもないですよ」

そう答えるとふーんと面白くなさそうな声を出して、テレビのリモコンに手を伸ばし電源を切った。テレビつまらなかったのかな。テレビを消したので家の中は一気に静かになる。なんだか手持無沙汰になってしまい、携帯を手に取ろうとしたら、左肩に手を置かれて向き合う形にされてしまった。

「どうしたんですか?」
「キスしていいか?」

言われて嬉しい言葉なのに、なぜか頭は冷静で降谷さん、酔ってるのかななんて思ってしまう。でもお酒は缶1本。降谷さんはお酒に強いのでこれだけで酔うはずがない。

「そ、それ確認するんですか?」
「ダメ、か?」

ダメなんてそんな事あるはずないですと言おうとしたけど、すでに唇は降谷さんの唇で塞がれてしまった。触れるキスをされゆっくりと唇が離れていく。いきなりのことで、私の顔に熱が集まり恥ずかしくなって、顔を逸らすと小さく笑う声が聞こえた。

「前キスした時も思ったけど、ういって今まで彼氏いたことないよね?」
「うるさいです」

彼氏が何だ言ってるけど、3年も一緒に暮らして男っ気が全くなかった私にわざわざそんな事言わなくてもいいのに。恥ずかしい気持ちが勝ってはいたけどやっぱり嬉しくって。肩に置かれたままの手が、私を強く引っ張り抱きしめられた。

「私、恋人らしいこと何もしてなくて不安だったんです」

何だか考えていたことがいきなり解決してしまって、ホッとしてしまい素直に言ってしまった本音。

「俺だって覚悟しておけ何て言ったけど、実際恋人になっても生活は変わらないから、タイミングがわからなくて。不安にさせてごめん」
「謝らないでください」

ずっと一緒に暮らしてたのも考えものだなと、降谷さんが笑うからつられて笑ってしまった。2人で笑って合っていると、ふいに視線が交わった。

「うい、好きだ」
「私もです」

私達はもう1度口づけを交わした。



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