やはりまだ気持ちはついてこないけれど、自分が置かれた状況については理解出来た。

組織に狙われてるから公安に保護されること。その期間はわからないとのこと。住む場所は降谷零さんの家。同居しなければいけないこと。夏休み明けは普通に学校に通っていいのかはまだわからないこと。住んでいた家は引き払われ、私の荷物はこの家に運び込まれた。夏休みはあまり外に出ないように言われたけれど、遊びにいける心境では無かった。事件があって携帯も買い換えた。

仕事が忙しいからなかなか帰ってこない日もあったが時間がある時には、必ず降谷さんが一緒にいてくれたこともあってだいぶ心も平常に保てていられた。でもやはりどこか心は不安定で、突然泣き出してしまうことは多々あった。普段は案外普通に過ごしていた。

降谷さんとテレビを見たり、他愛もない話しをしたり、心のもやもやも相談出来るのは降谷さんしかいなかったので、随分いろんな話しを聞いてもらった。ある日、なんとなくずっと気になる事を聞いてみた。

「よくわからないんですけど、こういう時の保護って公安の関係者の家に住むものなんですか?」
「ういは例外だよ」
「例外なんだ……。私の場合ここが1番安全ってことですよね?」
「ああ。組織はまだういのことを探してるしね」
「探してるって何で断言出来るんですか?」
「ういだから言うけど、俺は今その組織に潜入してるんだ。だから組織を誘導して探せなくしているところでね」
「そんな大事なこと私が知ってもいいんですか?」
「別に構わないさ。ういは事件の中心人物な訳だし。それなりの事を知る権利がある。それに保護してると言っても、公安を除けば年上のわけのわからない男の家にいる訳だし不安になると思ってね」
「なるほど」

そんな会話をした数日後、降谷さんから組織が捜査を引き上げたと報告され、夏休み明けから学校に通えることになったのと高校生の間はここでお世話になる事になった。両親が私の今後の為と貯めていた額は高校生活を送っていても余るほどの額だった。生活費は保護の為として公安が出してくれて何不自由なく生活を送れた。

夏休みが明け、心配をしてくれていた友達には、両親が亡くなって大変だった事と今は親戚のお兄さんの家に居候をしているということにしていた。それから自分でもお金を貯める為に、バイトを始めた。降谷さんとの暮らしは何も変わりは無かった。一緒に暮らすにつれて、段々本当のお兄ちゃんの様に接してくれて、生活はとても楽しかった。そしていつの間にかそれは恋心に変わっていった。優しくていつでも構ってくれて、仕事とはいえ自分の事を守ってくれる存在にある人を好きにならないわけがなかった。

でも私と降谷さんは8歳の年の差があってどうしようもない壁に思えた。これは隠し通さなければいけない恋心と決めた時から、あっという間に時は経ち、高校卒業間近となっていた。大学は推薦で早く決まり安心をしていた私はここの家を出ていかなければならない事をすっかりと忘れていたのだ。



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