大学の講義を済ませ、携帯を確認するともう大学の入り口にいると連絡が入っていたので、今から向かいますと返して早足で入り口に向かう。少しカツカツとヒールの音が辺りに響く。入り口に行くとわかりやすく車が停めてあって、その車の前で高杉さんはタバコを吸っていた。黒のパンツに白のVネックとシンプルな服装なのにとても似合っている。前を通る同級生と格好がほぼ一緒だが高杉さんが着ると色気とか比べものにならない。女の人は二度見していく人も少なくない。私は近づいてこんにちはと挨拶をした。高杉さんもこんにちはと優しく笑いながら挨拶をしてくれた。高杉さんは私の足元から上まで目線を動かした。

「随分可愛らしい格好するんだな。似合ってる」
「あ……ありがとうございます。高杉さんもいつもスーツなので私服が新鮮です」

外で会うとまた違うなと携帯灰皿にタバコを捨て、とりあえず車乗れと助手席側に回りドアを開けてくれた。助手席に座り、運転席に座った高杉さんはバックミラーを確認すると車を発進させた。

「昼飯まだだよな?」
「はい。まだです」
「適当な店でいいか?」
「大丈夫です。お任せします」

やっぱりすごく緊張する。バイト先ならスラスラとしゃべれるのに。手持ち無沙汰で髪とか触って誤魔化す。何を話したらいいんだろう? そう迷っていると、高杉さんからまた話しかけてくれた。

「もしかして、緊張してるのか?」
「えっ、はい。わかります?」
「なんかよそよそしいもんな。あんま構えずにバイト先でしゃべるみたいでいいから」

そう言われて少し軽くなった気がして、お昼どこで食べるんですか? といつもの調子が少し戻ってきた。

「洋食屋。前、昼休憩中に1回寄ったんだがなかなか美味くてな」
「洋食屋ですか。いいですね」

そんな会話をしていると、お店につき私は前に高杉さんが食べて美味しかったと言っていたオムライス。高杉さんはハンバーグを頼んでいた。運ばれてきたご飯はとても美味しくて、少しテンション上がり気味にすごい美味しいです! というと喜び方が子供みたいだなとからかわれた。ご飯を食べながら次はどこに行こうという会話になる。

「そうですねー。映画とかどうですか?」
「何か見たいものでもあるのか?」
「特にないです」

とりあえず提案して見ただけで、特に気になる作品はない。高杉さんも同じ見たいだ。

「そしたらウィンドウショッピングとかどうですか? でも、男の人はつまらないですよね?」
「ブラブラするには、丁度良さそうだし新しい鞄でも買うかな」

じゃあ、付き合いますよとお店を出て近場のショッピングモールに向かった。まずは高杉さんの鞄を買うために、紳士用品店に向かう。特にこだわりはないのかいつも持っている鞄と変わらない鞄を買っていた。そこからは適当にお店をブラブラ。だいぶ歩いて疲れたので、お茶をしようということになり喫茶店に入った。適当に飲み物を頼み席につく。

「いきなりなこと聞いていいか?」
「何ですか?」

私はアイスココアをストローで飲みながら高杉さんを見ると少し真面目な顔をしている。何の話だろう?

「銀時のことどう思ってる?」

全然予想していない質問にえ? と言ってしまった。まぁ、そういう反応になるわなと高杉さんは笑っている。

「別に深い意味じゃなくて店長としてどうよってこと」
「びっくりしました。そうですね、店長としてはもう少し真面目に働いてほしいなくらいにしか」

そうかと一言短く返ってきた。なんだかさっきより神妙な面立ちになる高杉さん。また何か聞かれるのかと構えてしまう。

「もう一ついいか?」
「はい」
「俺のことはどう思ってる?」
「かっこいい大人の人だなって思います。憧れの男の人です」

またそうかと声が返ってきた。さっきよりトーンが暗いのは気のせいだよね。私は何でそんなこといきなり聞くんですか? と素直に思った疑問を口にした。

「ういのことが好きだからって言ったらどうする」
「私、からかわれてるんですか?」

どうしたんだろ。高杉さん。何か冗談キツくてどう返せばいいかわからない。高杉さんってこんな人だっけ?

「ハッ、正解だ」
「ですよねぇ」

鼻で笑われた私はなぜか安心していたけど乾いた笑い方しか出来なかった。そろそろ帰るかと会計を済まして、車に乗り込んで帰路に着いた。その間ずっと無言。チラッと高杉さんを見るとただ真っ直ぐ前を見て運転をしている。バイト先から家は近いのでまずそこまでは行くんだろうな。外の景色を見ていると眠くなってきていつの間にか寝てしまっていた。肩を揺すられ起きると、見慣れた場所で車は停まっていた。近くの公園の駐車場だ。

「よく寝てたな」
「すいません。私、寝ちゃって」

別にいいんだがと吸っていたタバコを手に取った高杉さん。顔がさっきいた喫茶店の時と同じ顔をしている。また何かからかわれるのかな。

「高杉さん?」
「さっきの話しだけどよ。本気なんだわ」
「はい?」

言ってることがよくわからなくて思わず失礼な返し方をしてしまった。本気って事は好き……ってことだよね。私を? 高杉さんが?

「良ければ付き合ってほしい」
「あっ、そのえっと」

高杉さんはかっこいい大人の憧れであって特に恋愛対象として見てない。ダメだ。やっぱり急過ぎてそれは好きなんじゃないかと勘違いを起こしそうだ。

「別に憧れなら憧れで振ってくれていい。勝手に言い出したのはこっちだし流れで好きって言っても長く続かねぇしな」

やっぱり高杉さんは大人だ。ちゃんと私の答えを聞こうとしてくれる。私はしっかり高杉さんに向き合った。

「ごめんなさい。私、高杉さんとは付き合えません」
「うん。わかった。じゃあ、これからもお店の常連ってことでよろしくな」
「はい」

帰るか、家どこだ? と言われ私は家の場所を伝え車は動き出した。何だか振ってしまった後でどういたらいいかわからなくてソワソワしてしまう。でも、家は近いのですぐに車は止まった。ういと名前を呼ばれて高杉さんをみると清々しい顔をした顔で気にするなよと言ってくれた。

「は、はい。今日は楽しかったです。ありがとうございました」

こちらこそ、俺も楽しかったと笑ってくれた高杉さんに再度お礼を言って車を降りて、高杉さんを見送り少し処理し切れていない気持ちを抱えて私は家に帰った。

title:反転コンタクト



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