ブラブラと買い物を1人でしていた。服とかコスメとか。日用品は重くなるから帰りに。少し疲れたので飲み物を買おうと、近くのコーヒーショップでコーヒーを買って、向かいのベンチに座ろうとした。しかし、世間は日曜で人が溢れかえっている。向かいに行くのにも大変そうだ。どこで休憩をしようか迷っていると、道行く人にぶつかってしまった。幸い転ぶ寸前にぶつかってしまった人に抱きかかえられたので、コーヒーも無事だ。

「すみません。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそすみません。お怪我はありませんか?」

……。見た目は大学院生っぽい好青年。なのに、とても

「あ……かいさん?」
「赤井? 人違いでは? 私は沖矢昴と言います」

そうだよね。赤井さんな訳がないのだ。見た目が全然違うのに、私は何を言っているのだろう。

「すみません。少し知り合いに雰囲気が似てるなって思ってつい口に」
「そうなんですか。ああ、そうだ。お怪我はないですか?」
「大丈夫です。沖矢さんは大丈夫でしたか?」
「私は大丈夫です。では、私はこれで」
「えっ、はい。ありがとうございました」

その人はそのまま片手を上げ、背を向けて人混みの中に消えていった。その夜バーボンが家に来た。最近ジンは家に来てくれない。少し前までは、よく来てくれていたけど忙しくなってしまったのだろうか。その代わりにバーボンがよく来る様になった気がする。

「最近よく来ますね」
「今まで赤井秀一がよく来てたから鉢合わせるのが嫌でね」

そう言えば、私赤井さんに雰囲気の似た人と今日会ったんですよと口を開けばバーボンは血相を変えてこちらを振り返った。そんなに驚くことなのだろうか。

「本当に雰囲気だけですよ。見た目は別人で赤井さんより爽やかでしたし」
「どんな人物でしたか?」

私は聞かれるままに特徴などを言うと、バーボンは出かけると言って足早に出て行ってしまった。変わりに入ってきたのは、急ぎ足で出ていくバーボンを横目に見るジンだった。

「バーボンのやつ何かあったのか?」
「知り合いに似た雰囲気の人が街にいたって話をしたら飛び出して行きました」
「知り合い?」
「はい。ライに似てる人がいて……」

一瞬にしてジンの目が鋭い目つきになる。きっと、これがジンの本当の目なんだ。私を睨みつけるように迫ってくると低い声でどこでだと言われる。素直に今日会った場所を言うと、そうかと頭をひと撫でされバーボンを追うように、ジンも出て行ってしまった。取り残された私は、この後待ち構えていた運命に抗うことは出来なかった。私の日常会話が引き鉄を引いたなんて知らないまま。



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