お風呂に入っていたら、玄関の扉が開く音がした。......誰かな?私はお風呂から上がり、ルームウェアを着る。黒猫っぽいこのデザインが好きで、最近のお気に入りだ。髪は濡れたままだけど、乾かすのがめんどくさいので、肩にタオルを引っ掛けてリビングに入った。そこには長髪のニット帽。

「ライ、おかえり」

ああと返事をしたライは、難しそうな書類を見ている。私は冷蔵庫からお茶のポットを出して、2人分お茶を注ぐ。さて、夕飯はまだ作っていない。ライは食べるかな。どうぞとお茶を出し、ついでに夕飯を食べるかを聞いた。

「せっかくだからいただこう」

何がいいですか? まだ決まってなくてと冷蔵庫を覗くと、髪から落ちてくる雫が垂れてきて、タオルで適当に拭う。何を作ろうか考えていると、おいと声をかけられた。

「何か食べたいものありました?」
「頭乾かせ。風邪引くぞ」

面倒だからいいですと返そうとしたら、いきなり立ち上がり部屋を出て行ったライ。不思議に思って、開けっぱなしの扉から向こうを見てみると、手にドライヤーを持ったライが現れた。

「俺が乾かしてやる。そこに座れ」

顎でさっきまで、自分が座っていたところをさす。乾かしてもらうとか恥ずかしすぎる。あとで自分でやりますと言ったら、腕を引っ張られて強制的に座らされてしまった。まぁ、いいや。ここは素直に従おう。ドライヤーのスイッチを入れたライは躊躇いもなく私の髪を触り乾かしていく。

「ライも髪長いですよね。乾かすのめんどくさくないですか?」
「めんどくさいがちゃんと乾かしておかないといけないだろう」

ライはしっかりしてそうだもんな。大人しくじっと座っていると眠たくなってくる。少しウトウトしていたらいきなりうなじを指先でなぞられて、体が反射的に動いてしまった。

「ど、どうしたんですか? くすぐったいですよ」
「うい、その跡」

跡......? 一体なんの話だ。戸惑っている私を見て、ため息をつかれてしまった。跡ってなんですか? と聞いてもいや、いいと言ってドライヤーを持ち直し、再び髪を乾かし始めた。ドライヤーの音に負けないように、少し声のボリュームをあげる。

「ねぇ、何ですか? 跡って? 虫さされとかだったら薬塗りたいんですけど」
「悪い虫に刺されてるみたいだから俺が薬を塗ってやろう」

ある程度乾いてきたようでドライヤーを止め、床に置き、私の髪をかきあげ纏め始める。薬なら寝室の薬箱にあるので、取りに行ってきますと言っても手を離そうとしてくれない。振り返ろうとしたら、髪を上げている反対の手が腰に回り後ろに少し引っ張られた、次の瞬間うなじに唇を落としてきた。声が出なくて、体だけでも避けようとすれば腰に回された手が上に上がり肩を抱かれ更に逃げられなくなる。舌で舐められて少し強めに吸われる。予想外のことに頭も体も働かない。

「ラ......イ......? 何して」
「消毒だ。悪い虫に刺されてるって言ったろ?」

......もしかしてキスマークのこと? ジンに付けられた覚えはないけど、跡があるということはそういうことだろう。でもなぜライがこんなことをするのかがわからない。ライは声低く笑っていて、楽しそうにしながら私を開放した。

「ういにいつまでも勘違いされているようでは、俺もあいつも気分が悪いんでな」
「それは保護の話でライは関係ないんじゃ」
「保護の話ではない。うい、ジンと付き合い始めたのか?」

あまりにも真っ直ぐに聞いてくるので、私もそうですよと偽りなく答える。また低く笑われた後、俺もういが好きだと言った。......あれは保護の話ではなく、恋愛の話だったのか。バーボンの言っていたことがようやく理解出来た。

「でも、私ジンと別れるつもりないです」
「ああ、今はそれでいいさ」

そう言いながらドライヤーのコードを片付け洗面所に持って行って戻ってきたライは、さっきはすまないと小さく謝った。



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