今日は、バーボンが監視にやってきていた。自室にしばらく籠っていたバーボンがリビングに顔を出すなり、神妙な面持ちで口を開いた。
「話しがあるから聞いて欲しい」
「わかりました」
私は課題を中断して、ソファに座ったバーボンの前に机を挟んでそのままカーペットの上に何となく正座をした。
「俺は、公安の人間なんだ」
「え? あっ、はい」
バーボンは私がすんなりと受け入れた事に疑問を持っていない様子だ。そうか、ライが言っていたのはこの事だったんだ。そう納得して、ならばと気になっていた事を直接聞いてみようと思い、疑問をぶつけた。
「公安は私のことを保護するつもりなんですか?」
「もちろんそのつもりだけど、君はここを動く気はないみたいだね?」
ライから聞いたのか、この人の洞察力というものなのかは、よくわからないが私はその通りですと答える。不満そうな顔をされても公安の言うことを潔く聞くつもりはなかった。ジンは私に良くしてくれているし、私自身、組織に関しては、知らない事の方が多いから保護なんてされたくはない。
「組織が潰れたときは、こちらでの保護は決定事項なので耳にはいれておきます」
わかりましたと生返事をすると、ため息をつかれてしまった。わかってはいる。あの両親から産まれたということは、私の意思が通らないことや本当は自由などないってことくらい。普通に考えれば、もう保護されていてもおかしくはないのに、多少の自由が許されている今はとても幸せな事なのではないかと感じた。お母さんとお父さんが亡くなったあとの方が、息苦しいや。両親と暮らした幸せな日々を思い出しながら、逃げるように課題を再開した。